るか吉

オッペンハイマーのるか吉のレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.4
まず前提として、予備知識がないと完全に置いていかれていたと思う。
作品に集中するなら、オッペンハイマーの簡単な歴史(1930〜50年代アメリカの歴史)だけでも知っておいた方が絶対に良い。

大きく分けて2つの視点(モノクロとカラー)で描かれていて、時間軸が行ったり来たりするということも踏まえて観てほしい。


作品としては、アカデミー賞作品賞受賞も納得の出来だった。
これは、簡単に地球を破壊できてしまう核兵器が存在する世界を、今私達は生きているのだという警鐘を鳴らす映画だった。
日本人はより痛感すると思う。


原爆被害を直接的に描かなかった件については、思うところがある方がいるのも分かるが、
もしここで描いたとして、”衝撃的なものが映っている映画”みたいな扱いで消費されるだけになる恐れもあるし、「恐ろしい映像があるなら観たくない」と拒絶する人が出てくる可能性もある。

できるだけ多くの人に観てもらってこそ意義のある映画だと思うし、
実際はどうであったのか観客自身が自分で調べ、考え、議論するきっかけとなる作品にしたかったのではと私は感じた。

時間軸が分かりづらいのも、一見不親切な作りに感じるが、複雑なのもあってか、アメリカでもリピーターが多くヒットしたらしいし、一回観たら満足!という作品にしないことで、観客に思考を促す意図もあるのかもしれない。

また、劇中のラストのアインシュタインの言葉を思い出すと、アカデミー賞の受賞自体にモヤモヤを感じるかもしれないが、
受賞することで、沢山の人の目に触れ、時が経っても何度も振り返られる機会を得たことは、良いことなのではないか。

私達は、オッペンハイマーが変えてしまった世界を生きているというこの恐ろしさを、常に意識して生きていくべきだと思う。
るか吉

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