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オッペンハイマーのMasterYuのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.5
第二次世界大戦下、原爆開発に成功した「マンハッタン計画」の中心にいたオッペンハイマー。
「原爆の父」と呼ばれたオッペンハイマーが、どのように原爆開発に取り組み、そして原爆使用後にどのような生き方をしたのか?

公開初日、IMAXレーザー鑑賞。

いつまで経っても日本で公開してくれないので、一体何やってんだ?と思っていた人も多くいたと思いますが、こうして公開してくれて本当に良かった。

時系列が入れ替わる構成は、それなりに史実を知らないと分かりにくい点があるかと思いますが、この構成の妙が180分という尺の長さを感じさせない牽引力を発揮していましたね。

1つは赤狩りに合い、オッペンハイマーが聴聞会に出席させられる54年のオッペンハイマー事件。

1つはオッペンハイマーの学生時代、教鞭をとったカリフォルニア大、ロスアラモス国立研究所における原爆開発と英雄視された過去。

1つはルイス・ストローズの59年の公聴会。

180分という長尺でも描き切れないエピソードの取捨選択もまた、ノーランの巧さを感じるところでしょう。

広島、長崎の被害描写がないことに批判があったそうですけど、オッペンハイマーが被害映像から目を背け狼狽しているシーンだけで十分だったと私的には思いました。
オッペンハイマーというタイトル通り、これはオッペンハイマーの物語であり、彼が英雄視される要因となった研究結果を直視できなかったことを見せた方が、彼が拭い去れない業を背負ったことの証明になるし、そこに込められたノーランのメッセージも感じ取れたのではないかと思います。

キャスティングに関しては、キリアン・マーフィーの説得力、ロバート・ダウニー・Jrのいやらしさ、他豪華俳優陣の確かさが、ノーランの構成・演出の巧さと相俟って、間違いなく作品のクオリティを上げているので、強い没入感を得られました。

より理解力を深めてもう一度観たい。
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