KnightsofOdessa

ムリナのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

ムリナ(2021年製作の映画)
1.5
[ムリナは無理だった] 30点

今年のカメラドールを受賞したクロアチア映画。TIFFで毎年一本くらい観てる気がする家父長脱出少女もの。今回はクロアチアの美しい海岸で漁師として暮らすアンテ、その美しい妻ネラと娘ユリアを描いている。外の世界を知らないユリアは、家の近くに停泊して遊び騒ぐ同年代のパリピたちを羨ましそうに眺めている。そんな中で魅力的な外世界を背負って登場するのが自宅周辺の土地を購入しに来た金持ち男ハビエルである。彼の存在は暴力的な父親と相反するように並べられ、まるで白馬の王子様のように見えてしまい、ユリアは勝手に両親とハビエルの三角関係から自分へと及ぶ物語を作り始める。とまあ見事に見たことある展開の連続で、舞台がクロアチアで、ムリナ=ウツボが大海を知らずに海底で暮らすメタファーになっているのがユニークなくらい。ハビエルが"この綺麗な青い海!"みたいなこと言ってたのに海の中がクソ汚いのが非常に気になった。これがカメラドールねえ…

しかし、不思議なのはハビエルの存在である。父親アンテの態度は暴力的で、確かに家父長的な言動でユリアの進む道を阻む存在ではあるのだが、それに対する白馬の王子が全く信用ならないハビエルなので、途中からの父親の行動は"これまでこいつに人生を絞り尽くされたんだから娘なんかやらん"という文脈も同時に成立してしまい、終盤は"そりゃそうやろうな~"くらいにしか捉えられなかった。この親や土地から出ていくことには賛成だけど、ハビエルと一緒ってのはダメでしょと、なんだか冷静になってしまった。流石にどんな理解のある親でも監禁しちゃうんじゃないの?まぁ、こういう作品の存在が傑作を傑作たらしめている気もするので、バンバン作ってください。

追記
上映後に友人が、"スコセッシとかプロデューサーが口出ししたんじゃないかってくらい初監督作にしては若さがなかった"と言ってて確かにと。
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