KOUSAKA

その日の夜明けのKOUSAKAのレビュー・感想・評価

その日の夜明け(2021年製作の映画)
3.6
東京国際映画祭2021にて鑑賞。

パトリシオ・グスマン監督の『夢のアンデス』を先日鑑賞したんですが、パンフレットに記載されていたチリの歴史年表に「1971年:チリの国民的詩人パブロ・ネルーダがノーベル賞を受賞」と書かれていたので、たまたま名前だけは知ってましたが、共産党員で外交官経験もある政治家だとは知りませんでした。

しかしまあこの男、薄給の名誉領事とはいえ仕事しなさすぎ😵あと少なくともこの作品を見た限りではありますが、はっきり言ってただの遊び人やし、女性の扱いもひどい😣

特に有色人種の女性に対して、差別心とエキゾチックな性的嗜好が混然一体となったような、ねじ曲がったオブセッションを抱えていて、それが物語の軸にもなっています。

前任地のビルマで捨ててきた女性のことを「愛のテロリスト」や「ビルマの黒ヒョウ」呼ばわりする始末で、確かに遠くスリランカまでパブロを追いかけてきた女性の気が狂わんばかりの叫びは、あまりに強い悲劇性によって喜劇的にも見えてしまうほど(大量の涙と共にパブロのもとを去るシーンでは、悲しくもあったが凛としていた)。

これほど女性にひどい扱いをしながら、さらに毎日トイレ掃除をしてくれるサッキリと呼ばれる最下層の女性に赤いバラをプレゼントしようとしたりして、ホントに懲りない奴です😣

サッキリの音楽(めちゃくちゃ良い!)を聴きつけて一緒に踊ったりするなど、人種分け隔てなく接するところは良い面やと思うけど、さすがに最後のサッキリの女性に対するレイプは全面的にアウト😡

欲望の赴くままに弱者を支配しようとする行為は絶対に許されるものではありません(自分は気づきませんでしたが、このシーンの途中で退出した外国人の方がいらっしゃったようです)。

海岸で死の葬列を見たパブロと執事の会話のやり取りで「人が死んだのに祝うのか」「私たちはしないけど、最下層のサッキリたちはする。何故なら死ぬことによって新しく生まれ変われると信じているから」という言葉は、最も心に刺さりました。

死が祝祭の意味を持ってしまうということが、あのサッキリの女性の悲劇的な「決断」に繋がっているのだと思います😣

そして女性差別の問題が、2020年代の現代においても根本的に全く解決していないということを突き付けてくるラストシーンは切れ味鋭く、心を深く抉られてしまいました。
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