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茶飲友達のsymaxのレビュー・感想・評価

茶飲友達(2022年製作の映画)
3.8
"…承知です…"

妻に先立たれ、痛い程の寂しさに苛まれ、耐え難い孤独に押し潰されそうになっていた茂雄の目に止まったのは…

"茶飲み友達、募集"

と書かれた新聞の三行広告…

"お客様には、高級茶葉で淹れたお茶をお買い求めになって頂くだけです…"

"ティー・フレンド"の代表マナの言葉に思わず"玉露コース"をお願いする茂雄…

かなりの高評価であった本作を鑑賞…どうにも居た堪れない…そんな印象を持ちました。

しきりに"ファミリー"を強調する主人公マナのセリフ一つ一つには、孤独な老人に寄り添い、妙な説得力がある反面、結局は売春の斡旋といういかがわしさ…そう言った胡散臭さを上手く演じた岡本玲の演技は素晴らしいです。

茂雄がエプロンをつけて欲しいとリクエストした際、"オプションは別料金"と割り切って断る松子の姿は、本作の本質をついているようで…

孤独に寄り添ったとしても、それは一時の"かりそめ"の関係…擬似家族のようであった仲間達も呆気なくその関係性は壊れてしまう…

でも例え"かりそめ"であったとしても、確かに心が満たされていた訳で…渡辺哲が演じる茂雄がティー・ガールズとの逢瀬で生き生きとしてくる様子からの落胆に残酷なモノを感じたのです。

実際に摘発された事件が元となっていますが、経営者側を若者に変更する事によって、老人だけでなく若者が抱える寂しさや孤独も描かれ、今の社会が抱える闇をより深く考えさせられる秀作です。

私個人的には、繰り返される"承知です。"の言葉に、マナをはじめとする経営側のキナ臭さと漠然とした怖さを感じてしまいました…凄い作品です…
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