回想シーンでご飯3杯いける

わたし達はおとなの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

わたし達はおとな(2022年製作の映画)
3.3
大注目している木竜麻生が主演。彼女が演じるデザイナー志望の女子大生と、演劇サークルで脚本を書いている男(藤原季節)が同棲している中で、女性の妊娠が分かって、関係が壊れていくというストーリー。

男女の喧嘩を延々と描いている点でノア・バームバックの「マリッジ・ストーリー」っぽく、過去と現代を対比して描く手法は、日本映画「ちょっと思い出しただけ」を思わせる。2人の演技は流石で、言葉を重ねれば重ねるほど互いの醜い部分が露になっていく脚本を、見事に表現していく。基本ラインでは、僕の大好きなタイプの映画という事になる。

本作は、劇作家の加藤拓也による長編監督デビュー作という事になるらしい。グリーンピースの下りや、(つわりで)気分が悪くなる彼女を貶す下りで見られる不毛な口論は、本作が醸し出すリアリティの最たる部分だと思うが、監督の若さがそうさせるのか、そもそもの2人の人間としての幼稚さに呆れてしまう部分が多々あり、後半は少し冷めた目で鑑賞してしまった。

タイトルが「私達は大人」ではなく「わたし達はおとな」になっている時点で、この幼稚さは意図的なものだったとも推測できるが、仮にそうであっても、男女各1人ずつでも良いから、メインの2人とは違う「大人」を登場させていれば、もう少し豊かな映画になっていたように思う。出てくる男も女もほぼ全員クズだし、みんな声が小さい!