kito

ある男のkitoのレビュー・感想・評価

ある男(2022年製作の映画)
3.2
世評が高いので期待して見始めたのだけど、早々にコレは合わないヤツかもと感じ、案の定、冷めたまま観終わった。

あまり好まない邦画で大作二作品を連夜観るなんて滅多にやらないのだけど、「戸籍」テーマ繋がりで「市子」に続いて観てみた。結果「市子」の方が断然、刺さった。

本作がなぜ響かなかったのかを考えると、ひとつには今旬らしい安藤サクラこそほぼ初めましてだったけど、その他の俳優陣が良く見る顔ぶれだからだと思う。小籔千豊、でんでん、きたろうからの柄本明ってーーまあ、映画のそういう見方は変だとは分かっているのだけど、みな人気俳優故に過去作やお笑いのイメージがどうしても抜けなかった。

ストーリー的には戸籍ブローカーも確かにいるとニュースで観るし、犯罪絡みでお金同様に戸籍のロンダリングもあるそうだからテーマに無理は感じない。ただ、主人公が催す死刑囚の作品展でまさに手がけている事件の決定的ヒントを見つけるとかは、やはりご都合主義的で気になった。まあ、二時間の映画だからショートカットしないと事件が解決しないのはわかるのだけど。本作の原作は未読だけど、以前、原作小説を読み終えてすぐ観た「護られなかった者たちへ」がかなり改変されててゲンナリしたのを思い出した。

原作小説とその映画化のギャップはどうしても埋まらないので別物と考えるしかないのだろう。だからこそ、映画を観る際は、俳優たちの演技をはじめカメラアングルだったり音楽だったり映画ならではの表現に注目することになる。その部分の総責任者である監督が作品のテイスト、雰囲気を決めるわけで、本作は私とは相性が今ひとつだった。まあ、世の中、十人十色なのだから、そういうこともあるだろう。


余談だけど、日本の戸籍制度は非常にユニークで同様の制度を実施しているのは中国と台湾だけだそうだ。最近、公的証明書を取り寄せたり、親戚関係を見直す事情があり、本作も「市子」も考えさせられるところがあった。普段は意識せずに生活しているけれど、普通に生きていくだけでも諸々の法律や制度に守られており、戸籍を見ると色々な人と繋がりながら生きてきたのだということを改めて思わずにいられない。
kito

kito