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スキャナーズのkitoのレビュー・感想・評価

スキャナーズ(1981年製作の映画)
3.5
さすがのカルト作、ストーリーがちゃんとSFしていて楽しめた。

大昔に何度か観ているはずだけど、序盤に出てくる「頭がポン!」のインパクトだけが残っていて内容はすっかり忘れていた。まだCGのない時代、本作と「遊星からの物体X」(1982年)の特撮ビジュアルには驚いた。何しろ、当時は家庭用ビデオデッキとレンタルビデオが一般に普及し始めの頃で、映画を止めたりスロー再生で観るという概念すら目新しかった時代だ。

今のところ人生でたった一回だけ試写で観た「遊星からの物体X」が先日民放BSで流れていた。このデジタルリマスターは本当にグッジョブで見事に映像が蘇っているなあと観るたびに思う。

一方、本作はいかにも古い黄茶色味がかったフィルム調のまま。ただ、「遊星」ほどに特撮シーンは多くはなく、SFサスペンスとしてちゃんとドラマが進むのでこのレトロな色調も悪くない。現代風にニュートラルな色調にリマスターされるとかえって白けるかもしれない。

いささか飽きてきた感もあるX-MENシリーズの類や群雄割拠のスーパーヒーローたちからするとまさに "ご先祖さま" と言える超能力者たちのサイキックバトルが描かれる。ただ、単純に善悪二極の対決ではなく、捻りのある展開になっていて、久しぶりに観たせいでラストにはしっかり驚いてしまった。

最新CGを見慣れてしまったので、物理的な仕掛けによる力技な特撮はさすがに古いなあと感じる。でも、リアルタイムに観てきた世代なので、これはこれで懐かしくもある。「スキャナーズ、頭がポン!」というのはビートたけしのギャグだったと思うが、もはや使いどころも笑いどころも忘れてしまった。ただただ、このフレーズだけがしっかり脳裏に刻まれている。

鬼才にして変態が褒め言葉になっているクローネンバーグ監督は「ザ・フライ」がインパクト大で良く知られていると思う。個人的にはそっち方面の嗜好は強くなく、変態要素皆無でエスパーの悲哀が描かれる「デッドゾーン」がいちばん好きな作品だったりする。
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