さるやん

ある男のさるやんのレビュー・感想・評価

ある男(2022年製作の映画)
3.8
2022年も残すところあと一ヶ月。
ここに来てダークホースが現れました。
たいして派手な宣伝がされてるわけではありません。
しかし、サスペンスとしても、ヒューマンドラマとしても、一級品。

恋に落ち、一緒に家族として暮らした優しい男は、名乗っていた名前とは別人であった。彼は一体何者で、なんのために身分を偽らなくてはならなかったのか??

この映画象徴するアイテムとして、
シュールレアリズムの巨匠であり、日本でも人気のあるルネ・マグリットの作品
"複製禁止 "が使われております。
調べたところによるとマグリットのパトロンであるエドワード·ジェームズの肖像画であるといわれていますが、男が鏡を見ているにも関わらず鏡には男の後姿が描かれてます。まさにこの映画をしっかり表しております、最後にしっかりと疑問をなげかけております。

私事ではありますが、過去にマグリットの作品の展覧会が竹橋の国立近代美術館に来たときにいきましたが、この複製禁止があったかどうかは覚えてませんでした。
”光の帝国”という作品がメインになっていて、そのポスターを買った記憶がありました。
そして、
マグリットを始めてて知ったきっかけが
藤子不二雄A先生の【魔太郎がくる】の1エピソードでありそこにでてきた
浪人生の陰間鏡二は、古書店でルネ・マグリットの画集を手にし、『ピレネーの城』に魅了される。絵画の中に描かれた巨大な石は、やがて幻影として陰間の心身を蝕み始める

という話で 空中に浮いた巨岩の頂上に建つ城に、さまざまな空想を掻き立てられてさるやん自体も魅了されたものでした。

そして、そのマグリットの複製禁止と同様、ある男 は一人の男の死によって、彼がなぜ名前を偽らなくなったのか?
そして、戸籍や名前、そして家族とは。
なおかつ、今作では妻夫木聡さん演じるもうひとりの主役弁護士の木戸が在日コリアンであり、たびたびそのことが登場人物からの口からも語られ、苦い思いをすることにもなります。

また、撮影もガラスやテレビに写った顔や、木陰から指す木漏れ日、dm10さんが指摘したような坂道など、背景や風景に意味をもたせる工夫もさり気なくほどこされています。

また、ほんと少しの出番でありながら豪華な脇役陣。
そして、安藤サクラのでしゃばりすぎない存在感、地方に暮らす過去につらい思い出のあるシングルマザー、手に入れたと思った幸せが実は偽りだったのではないかと、疑問をもつ一方愛した男を信じたい気持ちと、子供のたちにたいして、どう説明をしていけばいいのかわからないといった心情をみせてくれます。
本当に序盤の泣きの演技、いや演技ではなくひとりの女の佇まいを感じさせてくれました。

全体的には重い話だとは思いますが、過去の探求という、手段によって飽きさせずに見せる脚本でした。

全国的にすずめの、影に隠れながら見事に楽しませてくれながらまた考えさせてくれる一本として、今年の上位にくい込む作品でありました。

お近くで公開しおりましたら、是非ともご覧頂きたい一本です。

一推しの、河合優実さんもでてて、ちょっとエロティックなシーンだったのでマスクの下で鼻息が荒くなってメガネが曇ったりは、してません。してません。
さるやん

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