半兵衛

レイプハンター 通り魔の半兵衛のレビュー・感想・評価

レイプハンター 通り魔(1986年製作の映画)
3.3
過去にレイプされた女性が再び襲われたことをきっかけに己の内に隠されていた性の衝動に気づき、やがて本能のままに動くようになる…といういかにも男性が夢想するような暴行ものの一作。個人的に暴行ものが好きではないのであまり気分が乗れなかったし、個性的な登場人物がそれなりに登場するのにバックボーンが描かれないので単に話を進行させるために出てくる道具扱いになっており、誰と誰が出会って化学反応を起こすこともないまま淡々と進行しオチも特にないという物語も面白味に欠ける。

それでも『恐怖分子』ばりの写真の使い方や診療に使うために録画されたビデオ、空き地に置かれたコインランドリーなどが都会に生きる人間たちの心に潜む孤独感を表出させる演出が巧みで最後まで見てしまう。レイプ願望はともかく、画面越しから出てくる登場人物の底冷えした感情は都会に住んでいる人間なら多少は共感できるはず。

ちなみに暴行もので都会に住む人間の虚ろな心を描くという作風は同時代にピンク映画で活躍していた佐藤寿保を思わせるが偶然なのか、それとも意識したのだろうか。佐藤作品でお馴染みの小道具であるビデオや写真が出てくるし、空き地にあるコインランドリーを舞台にしているところも何となくピンクっぽい造りだし。

ロマンポルノの常連である中丸新将の不気味な医者が気持ち悪くて作品の世界観にぴったり、あと正体不明の男を演じる若き日の山路和弘の気取った二枚目ぶり(声はこの頃から完成しており、所々で彼の声がジェイソン・ステイサムやピーター・セラーズに聞こえてくる)も見所。

ちなみに近くで見ていた女性が映画終了後、「気持ち悪い」と一言。やはりこういう暴行で感じるという構図は男性の妄想でしかないことを再確認。
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