Junjun99

ベルリン・天使の詩 4K レストア版のJunjun99のレビュー・感想・評価

4.0
初公開時はモノクロ画像とボソボソ喋る天使のセリフが眠く,うとうとしてしまった。37年後の再上映では,自分自身も中年を過ぎ,美しいラブストーリーの裏テーマは“平和を祈る映画“だったのかと深く感じ入った。

天使の世界はフィクションであり,モノクロで静かだ。永遠の命を授かり空間を自由に移動できる天使ダミエルとカエサルは,いつもベルリンの女神像の上から人間界を見下ろしている。

人間の世界は饒舌で色彩にあふれている。しかし,生身の人間はもろく,悲しみに満ち,儚い。その人間達に温かみ,勇気,ねぎらいを与え,そっと寄り添う天使たち。

”そこにいるんだろ?見えないが感じるんだよ“
と刑事コロンボがつぶやく,そのシーンが好き。

そして,ときどき差し込まれる戦争写真,(現実だからカラー映像)無言のメッセージ-鎮魂歌-として受け取れる。
東西冷戦下,ベルリンの壁がまだ西ドイツと東ドイツの両国を分断していた頃の映画なのだから。

異なるフィルムで,非現実(さっき)と現実(いま)を描く手法は最新作「パーフェクト・デイズ」の原点でもあり,ヴィム・ヴェンダーズ監督ならでは趣きだ。
それにしてもあの当時,空撮やフィルム交換や編集作業は並大抵ではなかったはず。
やはりクレージーな映画監督のひとりに,違いない(笑)

サーカスの花形・空中ブランゴ女性に恋をし下界へ降りたつ天使ダミエルの目に映る,原色や音楽の洪水,まぶしくて幸せそうにコーヒーを飲むシーン,それは忘れがたい名ショットだ。
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