Junjun99

落下の解剖学のJunjun99のレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.2
フランスの山荘で,冒頭すぐ,夫は転落死してしまう。

何があったのか?
自殺か、事故か、殺人か。
を軸に法廷劇へと展開していく。

被告人サンドラは死亡者の妻。
シュッとしたイケおじ弁護人はサンドラの大学時代の友人。「私は殺していない」の告白に,問題はソコじゃない,無実を勝ち取るために人びとにどう見えるかが問題だなのだと諭す。
一方,検察側は感じワルイが有能な男で、細部を積み重ね、被告に不利な状況証拠で揺さぶりをかけてくる。

夫側からの視点、妻側からの視点、子供(視覚障害)の視点、三者三様の視点・思考に加え,裁判官や公聴席の人びとが感じる「客観性」の視点が複雑に絡み合う。
徐々に,外面では見えなかった夫婦の秘密が暴かれてゆく。
サンドラはか弱い女性として同情をひくような素ぶりは一切みせず,どんな質問や状況証拠にも感情を昂らせることなく,冷静に応じてゆく。

公判途中,(日本人には欧州三ヵ国の異なる立ち位置が少々わかりにくい) 実は,妻はドイツ人,夫はフランス人,息子の教育のため家庭内言語は英語だった、と明らかになる。つまり,妻は母語以外の互いの共通語・第二言語で会話し、第三国で暮らしている,というハンディキャップが常にあったのだ。夫は自国で暮らしているため、妻に比べればストレス低めだろう。

そして,妻は検察側から厳しい追及をされたとき.フランス語のある動詞が思い出せず、答えに窮し,この一瞬だけ、涙がこぼれ落ちてしまう。
言葉をあやつる(ドイツ語作家)職業なのに、言葉が出てこないなんて。

このシーンがヤバい、刺さった。

息子の決死の証言,愛犬の実験台など無罪を
勝ち取るが真実は灰色のまま
アメリカ映画の「gone girl」に似た話と思った。人気作家が主人公という店も同男よりも女の方が稼いでるのも同じ,後味に苦さが残った。


元感想 note→ https://note.com/kumacho_o/n/n77b1f08ea730
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