つかれぐま

カード・カウンターのつかれぐまのレビュー・感想・評価

カード・カウンター(2021年製作の映画)
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スコセッシの大作の影で、
盟友ポール・シュレイダーも「アメリカの自省」を渋い渋い佳作に。

映画後半まで気付かなかったのだが、主人公の行動原理は「赦しを得ること」だったのだろう。ラスベガスのカジノに行ったことがあるが、そこには一切の自然光がなく、時の概念がないに等しい空間。そんな「無限牢獄」で地道なカードカウンターに没頭する主人公はかつて中東で行った捕虜虐待への自省に支配される男。カードカウンターは己の感情を排するのに丁度良い。だから自分の食い扶持しか稼ごうとしない。相手の心を読まなくてはならないポーカーは気が進まない。

(元上官へ復讐しようという)カークの誘いも断り、逆に彼を赦すように諭す。元上官が赦されれば自分も赦されるのでは?という他律的な思考が、なんかもう辛すぎた。そんな理屈で(カークの借金返済のために)大勝負に乗り出していくのだから、主人公がいかに悪夢から逃れたかったのか、その辛さがわかったような。

しかし結末は皮肉だった。
元上官を「赦さなかった」ことで、
主人公は赦されたのだろうか?
今度こそ「無限の牢獄」に放り込まれたのだろうか?
余白たっぷりの着地が渋い。