netfilms

ブレードランナー ファイナル・カットのnetfilmsのレビュー・感想・評価

4.5
 『ブレードランナー』オリジナル版、ディレクターズカット版、ファイナルカット版と観てきたが、明らかに画質は著しく向上している。雨がこれ程きめ細かく、奥行きの霧に包まれた仄暗い明かりまで見事に再現したプリントで言えば、今作を超えるものはないだろう。従来ワークプリント版にのみ存在していたアイスホッケーマスクを着けて踊る女達のシーンや、完全版でのみ見られた暴力シーンも復活しているものの、それらは本筋に関わるものではなく、あくまでマニア向けのオマケでしかない。しかしながら、この2007年版はやはりデジタル技術の向上に負う部分が極めて大きい。ただ逆に極めてクリアな画質が、地球に留まった人々の貧困やロサンゼルスの猥雑さを表現しているとは言い難い側面もある。『ブレードランナー 2049』への予習という意味で言えば、リドリー・スコットにファイナル・カット権が与えられなかったオリジナル版よりも、ディレクターズ・カットやこのファイナル・カットを観た方が監督であるリドリー・スコットの想いは明確に伝わる。クライマックスのデッカードとレイチェルの描写も、エレベーターまでが好きな人にはこのバージョンが強い余韻を残すだろうし、もっと根源的なハッピー・エンドを求めている人ならば、ディレクターズ・カット版でも十分楽しめるだろう。新作の予習・復習に『ブレードランナー』を振り返りたい人には、まずもってこのバージョンをオススメしたい。
netfilms

netfilms