KnightsofOdessa

送られなかった手紙のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

送られなかった手紙(1959年製作の映画)
4.5
[ロシアン・ドリームはシベリアの大地に眠る] 90点

実に戦争映画っぽい題名だが、シベリアにあるとされるダイヤモンド鉱脈を探そうと彼の地を彷徨う四人の探検隊が"ロシアン・ドリーム"を目指して発掘作業に没頭する話なので全く戦争と関係はない。しかし、『鶴は翔んでゆく』『怒りのキューバ』と同じウルセフスキーが撮るシベリアの森林はまるで戦場のようで、山火事や沼地を抜けて消耗していく探検隊の姿は戦地から命からがら撤退する兵士のようだ。『鶴は翔んでゆく』で少ししか描かれなかった戦場風景が場所を変えてここで登場したかのような錯覚に陥る。本作品を含めたそれら三作品は、カメラを顔に異常に近付けるショットは勿論のこと、手前に寝そべった人間を置いて遠近法を奇妙に狂わせたり、主観ショットを挟んで殴り合いや担架移動などでの"揺れ"を効果的に表現したりして、カラトーゾフっぽさが共通している。勿論、タチアナ・サモイロワの可憐さは健在で、あまりの可愛さに"可愛い"と呟いてしまうほどだった。

それでもやはり、『鶴は翔んでゆく』『怒りのキューバ』での莫大な熱量を受け取る物語に求心力がないので、それら二作品を比べると見劣りしてしまうのも事実である。ちなみに、1960年のカンヌ映画祭に出品されるはずだったが、未完成を理由に見送られたらしい。
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