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モガディシュ 脱出までの14日間のtkykのレビュー・感想・評価

4.3
圧倒的なスケールで実話をベースにした社会派のアクション映画を作り、それがちゃんとヒットする韓国社会と韓国映画の成熟ぶりがとても羨ましくなった。ソマリアを舞台にしていながら隅々まで手が行き届いている事がこのスケールの大きさを実感させたし、後半のカーアクションは非常に見応えがあった。
人物描写に関しても非常に細やかさが感じられた。韓国と北朝鮮が敵対関係にある手前全面的に助け合う訳にもいかないが、それでも所々で相手を思いやる事を示す描写があり、極限状態で滲み出る他者への思いやりを効果的に描いていた。特に食事のシーンは箸の動きだけでそれを表現しており、とても映画的な良いシーンだった。
舞台であるソマリアの厳しい現実も描かれていた。特にソマリアの子供たちが実銃を撃つ場面は印象的だった。北朝鮮の子供たちとの対比によって、戦争や暴力との距離感があまりにも違う事が強烈に感じられた。それ以外にも道の至る所に横たわる死体を車で乗り越える場面も戦場のリアルが感じられた。
唯一残念だったのは終盤のカーアクションのきっかけがコメディ的になっており、山場を迎えるのに若干緊迫感を削いでいた。
とはいえ全編非常に完成度が高く、エンタメ映画としても社会派映画としても良質な作品だった。
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