ぶみ

弟は僕のヒーローのぶみのレビュー・感想・評価

弟は僕のヒーロー(2019年製作の映画)
3.0
君がいれば、世界がきらめく。

ジャコモ・マッツァリオールが上梓した実話をベースとした小説『弟は僕のヒーロー』(原題:Mio fratello rincorre i dinosauri)を、ステファノ・チパーニ監督、フランチェスコ・ゲギ、ロレンツォ・シスト等の共演により映像化したイタリア、スペイン製作のドラマ。
ダウン症を患う弟の存在を隠してしまった主人公の姿を描く。
原作は未読。
主人公となる少年・ジャックをゲギ、ダウン症の弟・ジョーをシスト、二人の両親をアレッサンドロ・ガスマン、イザベラ・ラゴネーゼが演じているほか、叔母としてロッシ・デ・パルマが登場。
物語は、姉二人を持つジャックが5歳の時にジョーが誕生、ジョーは特別な子と聞かされてきたが、思春期を迎え弟の存在を隠すようになったことから巻き起こる騒動が描かれるのだが、まず特筆すべきは、ジョーを演じたシストが実際にダウン症があり、どこまでが演技で、どこまでが素の状態かわからないものであること。
そんなジョーを恥ずかしく思うジャックの心情については、その立場になってみないとわからないものではあるものの、大人への階段を登る途中で、そういった感情を抱いてしまうであろうことは理解できないものでは決してない。
そんなジャックが、家族はもとより、町全体を巻き込む出来事を起こしてしまうのだが、そこから周りの人々に支えられながら、一歩ずつ前に進んでいく様は、この手の作品の王道ながら、思わず応援したくなってしまった次第。
また、クルマ好きの視点からすると、主人公一家は、ショッピングセンターの駐車場に停めたクルマの車内で、家族会議なり、重大発表なりを行うしきたりなのだが、ジョーの誕生の話の時は、少し古めの赤いボルボ・240のワゴンだったのに対し、月日が流れた終盤ではシトロエン・ベルランゴにしっかりアップデートされていたり、はたまた同じくシトロエンの名車、2CVが登場したりと、見どころはけっして少なくない。
障害を持つ子どもがいる家族の話から想像すると、往々にしてジメジメと湿っぽくなりがちなところを、イタリア作品らしく、コメディテイストでカラッと描き出し、大人の世界に足を踏み入れたジャックのほろ苦い成長譚として楽しめるとともに、叔母を演じたパルマが、途中からバナナマン日村に見えてきて、笑えて仕方なかった一作。

親だからね、義務がある。許さないと。
ぶみ

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