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ベネデッタのくまねこのレビュー・感想・評価

ベネデッタ(2021年製作の映画)
3.7
「ベネデッタ」オランダの鬼才ポール・ヴァーフォーベン監督作をWOWOWオンデマンドで視聴。劇場で見逃した事を悔やんだ良作だった。

ベネデッタとは、神の祝福を意味するベネディクトの女性名である。17世紀イタリアにて同性愛で告発された実在の修道女ベネデッタ・カルリーニの数奇な人生と彼女に翻弄される人々を描いたナンスプロイテーション映画。

ポール・ヴァーフォーベン監督は宗教、教会の欺瞞性を暴くとともに、どんな手段を使ってでもトップに上り詰めて、逞しくサバイブする強い女性を本作でも描いている(いつも通りだね)

ベネデッタ役(ビルジニー・エフィラ)とバルトロメア役(ダフネ・パタキア)2人の愛憎入り混じる激しい演技、性愛描写が素晴らしい。特にベネデッタの、男性のような野太い叫び声には迫力があり、魅力的に映る。

聖痕を受けベネデッタがシスターから修道院長に昇格し権力と自室を手に入れ、バルトロメアとの性愛に励むのは、堕ちた教会の象徴。

ベネデッタの聖痕は自作自演の欺瞞だと糾弾するシスター・クリスティーナ(ルイーズ・シュビヨット)の目論みが失敗し、鞭打ちされ、やがて修道院の建物からの自死は哀しさが残る。

ベネデッタとバルトロメアの2人で、木製のマリア像でアレするシーンを覗き穴から見つめるフェリシタ前修道院長(シャーロット・ランプリング)のシーンはある種のエンタメ感がある(ここは映画の演出かも)

裸のバルトロメアに、お前の罪を告白しろと苦悩の梨という名の拷問器具を使う教皇大使ジリオーリの悍ましさ…

ジリオーリ教皇大使も自身の身体に現れつつあるペストの証しを隠す。ペストを街に持ち込んだのは教皇大使なのに、フェリシタ前修道院長やベネデッタ、バルトロメアらに罪を被せようとする薄汚なさはひどい。権力者も所詮人間であり俗物である。

街中で火あぶりの刑に処されるベネデッタを助け出すクライマックスも見応えがあり、シャーロット・ランプリング演じる前修道院長のとった行動にマジかよと驚いた!

ベネデッタの聖痕は本物なのか?それとも自作自演の虚構なのか?という話ではなく、カトリックにおいてシスターの女性は教会の規則では神父(Father)にはなれない為、シスターは権力を欲し、聖痕を主張して聖女(Mother)に上り詰めようとしたものである。

そもそも、宗教とは合理的な説明がつかないものを信仰するものであり、ベネデッタ本人の揺るぎない信仰のストーリーとも解釈できる。 
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