Frapenta

ベネデッタのFrapentaのネタバレレビュー・内容・結末

ベネデッタ(2021年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

個人的に宗教の傲慢さが暴かれると同時に信仰の本質が見出される作品が大好きで、今作は宗教におけるタブーを盛り盛りに詰め込んでそれらを抉る傑作だった。

ポールヴァーホーベンはエルしか観たことなく、裸体や意味不明さで不快だった。
しかし今回は話としてはわかりやすい。基本的には奇跡が真実なのか嘘なのかが問われていく話。でもこれって表面だけの話で、行き着く先は真の信仰なのだ。全人類が考えを同じくする必要はなく、人それぞれが真実を持って信じることがおそらく宗教の本質であり、人の本質だ。
歴史上の伝説をヴァーホーベンのセンスで因数分解し、根源を探っていくのが心地よい。
そのなかで、シャーロットランプリング演じる元修道院長の結末がかなり考えさせるものがある。これまで神がわからなかった彼女がとった行動はかなり衝撃的だった。

御老人が撮る映画として「最後の決闘裁判」を彷彿とさせた。歴史上の真の正しさを今一度深く掘り下げようとする心意気は(それが本当に正しいかはさておいて)尊敬に値する。

宗教という大きすぎる権力に真正面で殴りに行くのは正直スカッとしたし、ベネデッタは必要(悪)になったのもいい。
やはり真実なるものは重要ではなくて、何を信じ抜くかが重要なんだと思う。それをできる人間は強い。
あえて言えばバルトロメアがちょっと可哀想かなといった感じ。でももうベネデッタはキリストとペシアに囚われているから誰にも引き留められないのだろう。
服を一切着てない奇妙な光景だったが、全てを曝け出している証拠でもあるし、それでもベネデッタは振り向いてくれなくて悲しかった。

奇跡には狂乱が付き纏う。心に残る傑作。
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