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コットンテールのbyebyebleuのレビュー・感想・評価

コットンテール(2022年製作の映画)
3.0
兼三郎の食い扶持はなんだったか、明子がなぜ兼三郎に惹かれたか、明子・兼三郎・慧の生活はどんなだったかなど、登場人物の置かれた文脈を明示せず、視聴者に解釈を委ねる部分が多い作品。

文脈情報が乏しくメッセージが明確じゃない映画はあまり好きじゃない。が、コットンテールは、リリーフランキーが醸し出す雰囲気によって語られていない余白が埋められているような感じがして、違和感なく鑑賞できた。

相手をありのまま受け入れることと、相手から期待された役割に応じることは、どちらも愛。ただ、人はこれを同時にはできない。相手をありのまま受け入れるなら、自分もありのまま受け入れられたい。相手に期待された役割に応じるなら、相手も自分の期待に応えてほしい。鏡写しの相互関係を求めてしまう。

要するに、相手に期待した分、自分も期待して良いと思ってしまうのが、よくある人間関係だ。

生前の明子が兼三郎に求めていたのは、自分をありのまま受け入れること。だから明子は、同じように兼三郎をありのまま受け入れていた。死期が近づいて明子が兼三郎に唯一期待した役割が、息子に信頼される人になってもらうこと。最後のシーンで兼三郎はやっと、家族の輪に入る=誰かに期待された役割に応じることができたのだと思う。
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