CharlieZG

さよなら、ベルリン またはファビアンの選択についてのCharlieZGのレビュー・感想・評価

3.5
エーリヒ・ケストナー著小説の映画化。

第一次世界大戦の敗戦から退廃の喧騒に大恐慌が吹き荒れるベルリンで夢を追う若者達の恋と友情を描く。

4:3スタンダードサイズに当時の白黒映像と荒い画質映像を短いカット割りで繋ぐ手法が退廃の進んだ世界を感じさせ、何処となく30年代になり切れていないセットの綺麗さが、逆に監督の言う「1930年代初頭のワイマール共和国頃と2020年代現代の類似」を表現していたように思う。

純粋であるがゆえ衝動を抑えられず転がる恋と、取り合う手を掴み損ねた親友への友情と、決して裏切る事のない絶対的な親子愛とが不況に喘ぐファビアンの生活の中で紛いないものとして印象に残った。
トム・シリングの品のある佇まいが共感できる誠実さと映り良かった。

静かに迫り来るナチス台頭を感じさせる箇所が不気味ではあるが、その意味でファビアンは “あれで” 幸せだったのかもしれない。
第二次世界大戦時には原作者のケストナーはアンチ・ナチスとして執筆禁止となったそうだ。
ラストカットは今でもあちこちで見られる独裁政治と言論の不自由に警鐘を鳴らしているように受け取った。

やがて訪れる暗黒時代、現代が酷似しているというならこの先は暗黒なのか?
それはドイツの話か?
世界のことか?


監督 ドミニク・グラフ

キャスト
トム・シリング
ザスキア・ローゼンダール
アルブレヒト・シューフ
アリョーシャ・シュタデルマン
ペトラ・カルクチュケ
オリヴァー・ラインハルト
ミヒャエル・ヴィッテンボルン
アンヌ・ベネント
メレト・ベッカー
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