みや

アンラッキー・セックス またはイカれたポルノのみやのレビュー・感想・評価

4.0
ルーマニアの歴史に疎いため、監督の描きたかったものが充分に汲み取れたとは思えないが、刺激的で、多様な角度から考えさせられた映画だった。
監督は、このコロナ禍を「マスクで顔の一部を覆い隠すことを余儀なくされ続けた鬱憤により、人々は逆に、素顔でいる時以上に人間の本質を曝け出した時期」と捉え、この映画を作ったのではないか。
なおかつ、自分以外の第三者を、さも自分は別の立ち位置にいるかのように冷ややかに笑い飛ばす(某ろゆきのような)スタンスは取らず、第二部では、徹底して自分と自分の国の歩みに、内的に向き合って曝け出すフェアさが良かった。
ただ、圧巻は第三部の会話劇だ。プライベートな夫婦間のセックス動画を流失させてしまったことに対して、担任教師を続けさせるかどうかを議しながら、話題は驚くほど多岐にわたる。しかも、その発言の一つ一つは、専門性の高い事柄から身体に染み付いている差別意識まで玉石混交で、それぞれの人間が、全く自分だけの立ち位置から、相手の立場お構いなしに独善的に吐き出している。その様は、今のXなどのSNSの状況そのまんまであり、もうお見事としか言いようがなかった。
ラストの展開には賛否が分かれているが、自分はもちろん「賛」。
今ある差別も、ジェンダー等に関わる無理解の状況も、あえて批判的な提示の仕方をせずに生で晒した会話劇の結末に、ディルドを突っ込んで黙らせるという演出をちょっとだけぶち込むことで、きちんと自分の思考のスタンスを笑いを交えながら示したセンスが抜群。
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