マーフィー

14歳の栞のマーフィーのレビュー・感想・評価

14歳の栞(2021年製作の映画)
4.0
2024/03/27鑑賞。

「子どもから大人になるその瞬間は、全ての生き物に訪れる」

心のどこかで見てーなーと思ってたのが期間限定再上映!
行くっきゃないやろ!!!と有給叩きつけて見に行きました。


とにかく編集が良すぎる。
ただ中学生の50日間を撮った映像を、こんなにもテンポよくリズミカルにまとめて、
しかもドラマになりそうでならないバランスで低空飛行のままじわりと展開がついていく。
本当にどうやって撮ったんだろう。

普通のドキュメンタリー映画だと、密着するものがはっきりあって、それを長い時間かけてとらえてその中に生まれるドラマを綺麗な編集で見せると思うんだけども、
この映画は対象が中学生36人。誰がどんな物語を持ってるかも分からない中で、とにかく撮りまくってインタビューしまくって得た膨大な素材から編集したのだろうか。
いやそんなやり方ではホワイトデーのお返しのシーンみたいな、双方の家でカメラを回して待つなんて絶対にできないだろう。
徐々に焦点を当てる場所を考えながらそれぞれの子どもたちの物語に寄り添っていったのだろう。

学校での姿だけではなく、プライベートまでそれぞれ密着できているのがすごい。
学校でクラスメイトに見せる姿と、家で家族に見せる姿が違うのは当然のこと。そのため生徒それぞれのストーリーやパーソナリティを追うには必要になる部分だと思う。
これを当然のようにカメラに収められているのがすごい。
思春期真っ只中の中学生たちがここまでさらけ出せるように信頼関係を築いていったということなんだろうか...。
子どもがカメラを向けられるって、「カメラに映ってるぜー映画デビューだぜーいえーい」みたいになると思うし、確かにそういう雰囲気のシーンも映ってるんやけど、
そういうノリの先にある、決して普段見せられないところまで踏み込んでると思う。
不登校になった子にまでインタビューできているのもすごいし、それだけに大切にしないといけない作品だということがとても分かる。
小さいところだけど「急にキャラ変わったらおかしいなと思って」っていうのもすごく思春期の生徒たちの繊細さや生きる社会を切り取った発言だと思おう。
本当はそんなこと気にしなくてもいいはずなのに、一度ハマったキャラから抜け出せないのよ学校では。
まあ社会でもそうか。学校ではより縮図感が増す。
ともかく、つくづくそれぞれの生徒の「14歳の栞」となる作品だなと思う。

私自身はそこまで中学時代の自分とリンクするようなことは少なかった印象ですが、
それ以上に中学時代にいた同級生とリンクすることが多く、
「あいつもそういう気持ちだったのかなー」みたいに思うことがよくあった。


担任によってまとめられたムービーの、
「そこにおれはいない」感はすごい分かる。
絶対そんな心境やんなっていう表情の生徒いた。
オフィシャルに残る写真とか動画なんか、基本的に中心メンバーが多いわけで、
そういう素材から卒業アルバムとかクラスのダイジェスト動画なんか作ると必然的に
「あーちょっと映ってるわよかったー」レベルのエキストラみたいな存在が出てくるに決まってる。
その辺のきちんとしたリアルも生徒の反応に見えてよかった。


「眠れる獅子」で眠っている生徒を映す、
自称「悪い子」の家のテレビでクレヨンしんちゃんが流れてる、
そういうところも上手い。
クレヨンしんちゃんに関してはほんまにBGMが聞こえてたぐらいのことなので、
意図したものなのかは分かりませんが。






エンディングの映像が天才的。
ドキュメンタリーでああいうの撮っとこうって決めて臨んでるのほんと手腕が光ってるよなあ…
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