たくみ

14歳の栞のたくみのレビュー・感想・評価

14歳の栞(2021年製作の映画)
4.3
レビューの評価が高かったし割と近所のキネカ大森で上映していたので鑑賞。

めちゃめちゃ良い。
ある中学校の2年6組の生徒である35人へのインタビューと学校生活の様子をひたすら見せられるだけの映画。
まず最初のサッカー部でクラスのムードメーカー的な子のインタビューから始まる。
彼の個性が爆発していて最初から心掴まれる。
そして次の子のインタビューに移って、、、というのを35人分繰り返すだけ。
なのにめちゃめちゃ面白い。みんなキラキラしてましたね。
傍から見ても2年6組は良いクラスだというのがわかりました。

自分が中学生の時はもっとヤンチャな見た目したやつとかおったけどこのクラスにはそんな子いなかった。
最早そんなヤンキーみたいなのも時代と共に廃れたんかな、、、
あと中学時代って大人になってからは考えられないような人間関係が構築されてましたね。
自分もバスケ部ってだけで平気で煙草吸ってたヤンチャな奴らとも仲良かったし、クラスが同じってだけで大人しめな子とも仲良かった。
世界が狭いが故に濃密だったんだなと今になれば思いますね。

この映画を観て真っ先に感じたことが中学生でも意外と考えて生きているんだなという事でした。
友達付き合いが上手く行くように明るく生きることを選択した子、逆に個を主張すると嫌われることを経験したから個を殺すことを選択した子、コミュニケーションとった事ない子と仲良くなるためにイジリをめっちゃする子、ある生徒の不登校の原因が自分であると考えて謝りたいと後悔している子などなど、、、
とにかく色々考えて中学という閉鎖された社会の中で生きようとしている姿に関心させられました。
色々考えてはいるんだけど、それを制御するべきという判断材料はまだないようで、その点は中学生だなと感じました。
平気で「低能な奴らに合わせる必要ないですよ」とか「別に友達は要らない」とか言っちゃう。
これって大人だと中々人前で言えない事だと思う。
それを着色することなく映画を通して公にすることでこのドキュメンタリーの精度がより良くなっている気がしました。

あと完結しない感じがものすごく良かったです。
おそらく付き合っているであろう2人の関係性。
バレンタインにチョコをもらってホワイトデーにお返しを渡すときに思いを伝える男の子。
バスケ部で怪我をして出れなくなった生徒が見事復活して試合に出れたのか。
不登校の生徒とその原因を作ったかもしれない生徒の関係性がどうなったのか。
全部どうなったのか映画で教えてもらえない。

とにかく全ていい意味で曖昧にしている。
勝手に全て完結するものだと思って観ていた自分にとってはハッとさせられました。
終わんなくてもいいじゃん、と突き付けられた気がしました。
実際に中2の彼らにとっては完結していないし、これからも高校、大学、社会人と世界がどんどん広がっていくのでここで区切りをつける必要もない。
作り方がマジで見事だなと思いました。
勝手に何らかのオチが付くという固定観念を持って観てしまった自分が恥ずかしかったです。

さらにドキュメンタリーの作り方として35人均等にインタビュー映像が使われている気がしました。
正直この子もっと深堀りしていけるよねって子もいるけど特別扱いしない。
均等に扱うことで優劣をつけなくしているのが素敵だなと思いました。
その短い時間の中でしっかり個性は出てた。
それを引き出せたのは制作陣の技量と関係性をしっかり築く事を怠らなかったからではないでしょうか。

絶対に自分の中学時代の誰かと重ね合わせる作業を鑑賞中しちゃうと思います。
こんな奴おったな~とか思いながら見れるのも大人が面白いと感じられるポイントだと思います。

本当に眩しかった。
同時に自分もこれくらい考えて人と向き合ったり恋愛したりすれば良かったなと感じました。
中学時代を振り返るという意味でもこの映画はオススメです。

【その他メモ・独り言】
・35人全員に幸あれ。
たくみ

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