たくみ

不死身ラヴァーズのたくみのレビュー・感想・評価

不死身ラヴァーズ(2024年製作の映画)
3.8
【高山VSドン・フライ】
松居大悟監督が描く恋愛映画とならば観に行きますよね。
『ちょっと思い出しただけ』があって『手』があって。次はどんな恋愛を描くのか。

以下ネタバレ全開ですのでお気を付けください。

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すこぶる変な映画でした。
ネタバレ全開とか書きましたけどほとんど良くわからなかったです。
けどなんか良かったです。主人公の長谷部りのの求心力にものの見事にやられた感じでした。
真っ直ぐすぎる恋愛映画で文字通りめちゃくちゃ走ってます。

冒頭から本当によくわからなくて、このノリ続くと勤務終わりの自分寝てしまうと感じたのですが、不思議な事に中盤からはピュアな恋愛映画に移り変わっていました。
松居大悟監督の手際の良さの見せ方が大分特殊です。

両想いになると愛しの甲野じゅん君が消えてしまうという物語らしいです。
正直そのあたりのルールが全然わからず、後半は別人だったよとかになってくるのでさらにわからなくなりました。

無理やり解釈すると、両想いになると消えてしまう甲野じゅん君は恋愛感情のメタファーと捉えました。
時々の恋愛に向き合っている時はその人その人がくっきりと見えているはず。
だけど恋が終わると好きな人との会話や思い出が徐々に色褪せ、「過去の恋愛」にひとまとめにされる。
そんな過去の恋愛を振り切ろうと走りまくるりのだが、いつも目の前に「恋」が現れてしまう。
その時に過去の恋愛を振り切ろうとするから上手くいかないが、1つ1つの思い出をきちんと心に浮かべ、向き合い受け入れ大切にしたからこそ、ラストは大好きな甲野くんと憧れの生活を描けたのではないかなと思います。

わかってないと書いたもののそれなりに感情は芽生えていた事に驚きです。

恋愛描写で好きだったものを1つだけ。
記憶が寝るとリセットされてしまう甲野くんを毎朝迎えに行くようになってからの距離感の描き方がお見事でした。
毎日が描写されるので同じ動作でも微妙に変化するのがわかります。
例えば講義を受ける時の座席の位置や、別れ際の「じゃあ」と言うタイミングだったり。
普通の映画なら徐々に距離が縮まっているんだなとわからせる、言ってしまえば擦られまくった手法だと思います。
ただ、本作は「記憶がリセットされているのに」という視点が加わります。
リセットされたはずなのに席が近づいていたり、リセットされたはずなのに「じゃあ」のタイミングが重なったり。
記憶を超えて2人が惹かれあっている事を見事に描いてとても好きでした。


この映画よくわかんなかったけど嫌いじゃなかったんですよね、むしろ好きと言うか。
理屈とか抜きにして惹かれるものがありました。
ノーガードで好意を相手にぶつけあって徐々に相手がそれに答えてくれる。
like a 高山VSドン・フライの殴り合いでした。
粗はとてつもない作品だと思います。
けど、それすら気にしない監督やキャラクターも真っ直ぐさがとても眩しく素敵な作品だなと感じました。


【その他メモ・独り言】
・冒頭のスピード感はおそらく原作漫画では成立してるのだと思う。
・見上さんのスタイリスト誰や、センス良すぎて超好きやった。
・田中ええやっちゃ。
たくみ

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