当時としては、かなりトンがった作品だ。主人公が「100年後だったら」というが、この作品が作られてから既に半世紀以上。何も変わっていないというより、分裂と対立が激化している。今見るべき西部劇と言っていいだろう。

• #流血の谷

これはものすごい陰惨な西部劇。
ダークな雰囲気をばりばりに煽る黒の強調が素晴らしい。
差別主義者の無法者との殴り合いなんて寒気すら感じる暗さだった。
ここでのバーのカウンターを活かした縦構図の画面に痺れる。

『高原の情熱』ばりのダイナマイト映画でもある。

法の暴力。全く違う価値観をぶつけながら秩序を大義名分にして先住民をコントロールしようとする偽善。弁護士ながら女性であるヒロインは無力さを実感しながら愛した先住民とは接吻すらできない。アメリカの正義は今でも押し付けがましい。日本ほど従順にアメリカの主義を受け入れた国はないしその屈辱すらも遠い過去に。ベトナム、イラク、アフガンは忘れない。常に正義を振りかざす連中の欺瞞を忘れてはならない。雷のなるなか暗い酒場で始まる決闘が忘れられない。西部劇はいつでもある種の郷愁を誘いながらその暴力による歴史は現代と直結している。