このレビューはネタバレを含みます
弱い自分を乗り越える物語として目頭が熱くなる展開もありましたが、作品としては今一つノリ切れずモヤっとする部分が残りました。
アバター姿でネット空間での絶大な人気を誇る少女が、それを脱ぎ捨てリアルな自分をさらけ出す場面が一つのクライマックスですが、観客の我々からすると「リアル」の少女もアバターと同じアニメ絵であることに変わりはなくて…。虚構と現実の境い目があいまいな分、感動シーンでのパンチが弱くなったように感じました。これはアニメという表現手段の限界かもしれません。実写との組み合わせであればまた違ったかも。
あとはDVという問題の扱いの雑さですね。DV被害を受けている少年に必要なのは立ち向かう勇気ではなく、逃げることのできる場所だと思います。少女の顔に傷をつけたDVオトコが傷害罪で逮捕されるぐらいのとこまで描かないと、結局はあの少年たちが虐待を受け続けるのではないかとモヤってしまいます。平気でああいうことする連中って反省なんかしなさそうだし。
どこまで掘り下げても足りないぐらいの根深い問題だと思いますが、この作品では少年少女の学園物語のスパイス程度にしか扱われておらず、問題提起をするだけで作品としての解決が提示されていないように感じました。テーマが重いだけにサマーウォーズのような多幸感がなく、それでいて掘り下げが中途半端で、少女の精神的な成長に焦点を当てるのであればもっと別のアプローチがあっても良かったように思います。
ノスタルジックで美しい日常風景の描写は、安定の細田クオリティでした。この作品の肝となるベルの楽曲と歌唱力は素晴らしかったですが、Vtuberのプロモビデオみたいな印象も若干あり、バランスとしてクドくなりそうなギリギリの線という感じでした。