たけのこ

PERFECT DAYSのたけのこのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
3.0
何が起きる訳でもありませんが、丁寧に撮られた映画でした。

役所さんの演技は評判通り良かったですが、寡黙な男の役なので、むしろ三浦友和さん(コールドケース以来の推し俳優)の良さが際立っていたように感じました。カンヌで役所さんが最優秀男優賞を受賞したとのことですが、この作品のようなある意味日本的で繊細な感情表現が海外で評価されたことが意外でした。

私がこの作品の良さを本当に分かるのは、おそらく今の役所さんと同じぐらいの歳になってからではないかと思います。もう戻ることのできない人生における悔恨。なぜあの時ああしなかったのだろう、なぜ今度、今度と先送りばかりして、あの時海に向かわなかったのだろうか? 私はまだ海に向かえるところにいるのだと思います。いや、私もまた今度にしてしまっているかな…?

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(比較文化論?)
ヴィム・ヴェンダースが撮ったことでも話題でしたが、セリフのニュアンスなどがどれも日本語が母国語の人でないと演出できないような繊細さであり、どのように撮ったのか不思議でしたが、エンドクレジットにはヴェンダースに並んで日本人の名前があったのでああそうなのかと。とするとヴェンダースはどのような形で携わっていたのだろうか?

あと我々日本人にとっては主人公の毎日がリアルで身近すぎて、海外の観客がこの映画を観る目線とはかなり異なると思うんですよね。我々にとっては何てことのない日常描写の一つ一つが、海外の人の目にはとても新鮮に映るのではないかと思って。日本人俳優による全編日本語での作品ゆえ、カンヌでの評価と日本での評価が全くのイコールにはならない性質の作品のように思います。

「木漏れ日」という言葉は、私が日本語の持つ美しさを考える際にいつもまっ先に思い浮かぶ言葉ですが、それをローマ字でKOMOREBIと表記して英語で説明したところで、その美しさの本質が果たしてどれだけ伝わるのか? MOTTAINAIなんかもそうですね。日本語が母国語でない人にとってはどちらも意味を持たない発音記号でしかないと思います。

ノーベル文学賞なんかでも、文章の美しさなんてそれこそ「てにをは」の微妙な違いで大きく変ってくるのに、それをマルっと他の言語に訳したところで本当にその作品の持つ素晴らしさを理解することができるのか?(いやできっこない)、とモヤっとするものがあります。同じ日本人だから同じ日本語を同じ意味で理解していると思っていたらそれも違っていたりするし、言葉って難しいですね。音楽や絵画などの非言語的な表現が持つ普遍性とは異なったものがありそうです。
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