唯

愛のくだらないの唯のレビュー・感想・評価

愛のくだらない(2020年製作の映画)
2.8
何年も泣いていないこと、何の浮き沈みもなく数年を生きてしまっていることに気が付き、これがこの先も何となく続くのかと思うと、どっしりと重たく茫漠とした不安に襲われてしまう。
人間、泣きじゃくることも笑い転げることもなくても生きて行けちゃうし、それも穏やかな日常なのかもしれないけど、満たされているとは絶対的に違う。

好きでもない男と何だかんだ離れられない自分が嫌になるし、こちらの冷めた気持ちに気付いていながら、必死に気を遣ってばかりの惨めな彼氏にもイラつく。
男って、とにかく見てなさ過ぎだし、見ようとしてなさ過ぎ。
こちとら、1万円はたいてアフターピル飲んどるんじゃ。
セックスの最中でも、頭が冴え渡るほど酷く冷めた自分がいるんじゃ。
言葉通りに受け取り過ぎだし、言葉の向こうを眺めようという想像力が皆無(気を遣い過ぎても考え物だけど)。

彼氏のヨシは、余りにも自分勝手な上に、訳の分からない虚言を振り回し、挙げ句の果てに悲劇のヒロイン振る。
なんやねん。時間を返せ。
景ちゃんみたいに優し過ぎる女の子は、こうやって疲弊しがち。

髪というか頭の匂いという、絶妙な匂いが自分にとっては一番好きだったりする。
何でもない様なところが自分には特別であったり、トランスジェンダーや無精子症といった不完全さを人は愛したりする(彼らには、弱い立場だからこそ人以上に考えて来た時間がある)。
全然良い匂いじゃないのに、その臭さがクセになって爪の臭いを嗅いじゃう、みたいな。

同時にのしかかる、仕事でのストレス。
どんなに一生懸命に男の倍働いたとしても、女の枠を出られない不条理。
女だからって色眼鏡で見られるのは嫌なのに、上手く行かないことばかりの現実に女を言い訳にしている自分はもっと嫌で。

ほんの少しでもゆとりやスペースを持っていないと、優しくなれない。
なのに、現代社会は、頭を抱える事案が多過ぎる。

彼氏がいると知って風当たりが強くなる、といったしょうもないことやくだらないことにとんでもなく時間を割かれているが、それによって私達の生活が構成されているのもまた事実。

甘やかな時間を時折思い出しては、ほんの少しの間それに身を浸して、また前を向いて歩き出す。
その人生は、決してくだらなくないと信じたい。
唯