唯

ソフィーの選択の唯のレビュー・感想・評価

ソフィーの選択(1982年製作の映画)
3.5
ソフィーとネイサンの歪んだ依存関係は、戦争の後遺症でもある。
友人スティンゴを含めた3人は、本来ならばただの親しい友達同士のはずなのに、○○人という属性で向き合うことを余儀なくされる。
ネイサンは、ユダヤ人としての憎悪や敵対心が恋人や友人に向かって行くし、ソフィーもまたアウシュビッツでの暗い過去に苦しむ。

ソフィーはユダヤ人ではないけれど、父と夫を処刑された上にアウシュビッツで過ごした経緯があり、生き延びてしまった自分に対する罪悪感を拭えない(そのことをネイサンから詰られたりもする)。
その罪悪感から自分が幸せになることを許せないので、自己を苦しめるためにネイサンと居続けるのかも。
ネイサンもまた、多くの同胞を理不尽に殺されたことから精神を病んでいる。
ソフィーには、助けられなかった我が子の代わりにネイサンを救いたいという思いもあったのだろうな。

人種によってのみではなく、思想によっても命が選別される恐ろしい現実。
子ども達が大人の言うことを何一つ疑わずに信じて、素直に当たり前に分断思想を持っていることがまた恐怖であり。
根っこでは人間として知り合いたいという心も持っているのだけどね。
こんなにも酷い戦中を生きた人々が、戦後普通の顔をして(もちろん重たいものを抱えていたというのは前提としながらも)生きていたことに驚く。

目を背けたくなるほどの無慈悲で残虐な世界なのに、ソフィーとネイサンがどこまでも美しい。
美しいものが理不尽に壊されて行く皮肉を浮き彫りにしている。
(ケヴィンクラインってイケメンのイメージ皆無だったのだけど、、役者って凄い。)

魅力のある人間とは、大抵危うさを併せ持っている。
カップルと男友達の3人の関係という、本当に成り立つのか疑問であるこの関係性もまたドラマを盛り立てる。

メリルストリープの独白のようなシーンで寄りのショットがとにかく多いのだが、これを成立させるのはアカデミー主演女優賞の演技とその透き通る様な美しさである。
唯