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ハウス・オブ・グッチの景のネタバレレビュー・内容・結末

ハウス・オブ・グッチ(2021年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

グッチ創業一族の醜聞というスキャンダラスな内容を扱うブラックコメディなのに、描き方に抑揚がなく、なかなか乗れなかった。160分という長尺なので余計に。シーンを切り取ると魅力的なところもあっただけに(アルドのシーン全般とか、ロドルフォやマウリツィオの友人たちを相手にパトリツィアが場違いな見栄を張ろうとして滑るところとか)、淡々とした映画になってしまったのはもったいないよーな。

キャストはかなり豪華で、グッチ一族の人間が数人出てくるのに一切混乱しなかったのはさすが。みんな良かったけど、ロドルフォ役のジェレミー・アイアンズとアルド役のアル・パチーノの兄弟が最高。特にアルドはチャーミングなところもあるし、出所後にパオロを抱きしめるところはグッと来た。パオロが株を手放したことを知った時の絶望のリアクションも好き。

主役のパトリツィアに関しては「グッチ一族を引っ掻き回す狡猾な悪女」かと思いきやそうでもなく、むしろ彼女のマウリツィオやアルドへの進言は単純に「夫の事業を守るため」としか思えなくて意外だった。実際のパトリツィアがどんな人間だったかは分からないけど、少なくともこの映画で描かれるパトリツィアは悪どいことを思いついたりやったりするものの、想像していたような「悪女」という感じでもない。それどころか意見しても「グッチの血を引いていない」「女が口を出すな」と軽視されてしまう。これはリドリー・スコットが敢えてそのように描いたんだと思うけど、このパトリツィアの「悪女かそうでないか」が曖昧な、あるいは多面的な描き方が、私のこの映画に対する「煮え切らない」「なんか薄い」という印象に繋がってしまったように思います。

しかし同族経営やら世襲制やらはロクなもんじゃないよなやっぱり。政治家を見ていてもよーーーーーく分かる。
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