クシーくん

果てしなき情熱のクシーくんのレビュー・感想・評価

果てしなき情熱(1949年製作の映画)
2.0
終始主人公にめちゃくちゃイライラした…余り本作のいい話を聞かず、市川崑本人ですら初期の失敗作扱いしていた様なので、そこまで期待値上げずに見たが、それでも酷い。とにかく主人公がクズ過ぎてウンザリする。途中、ある青年が主人公をボコボコに殴るのだが、歌謡シーンを除けば本作で一番良かった所かもしれない。

ヒロインがどこまでも主人公の夫に都合が良すぎてしかも学がない設定。モラハラを超えた夫の精神的暴力に対して、私の尽くし方が足りないから…とか宣うのもイライラするし、そんなバカ夫にどこまでもしがみつけ!とか見当違いなアドバイスをする笠置シヅ子にもイラつくが彼女はまあまだマシな方。ヒロインの母親も新しい男を連れ込んで親子の情(義理だが)に付け込んで金をせびると不快な人物造形で、主要な登場人物がいずれもろくでもないのだが、どこまでもエゴイズムの塊な上に、幼稚な自尊心で周囲に迷惑を掛けまくり、それを芸術家の苦悩みたいに自己演出している主人公が際立って最悪。悩んでる理由が「たまたま知り合って少し話をした程度の女に一目惚れして、その恋が叶わない」という、中学生以下の下らん理由で、大の大人が結婚した後にグダグダ言ってるのが本当腹立つ。あームカつく!何なんだこの主人公。僕の曲は僕だけの物だから歌うな!とか言ってキャバレーで暴れるシーンは正気の沙汰とは思えない。和田夏十は何を考えてこんな話を書き上げたのか理解に苦しむ。

本作ではその憧れの片思い相手に擬えて「湖畔の宿」や「夜のプラットホーム」を作曲したという設定になっているが、服部良一に迷惑だろこんな勘違い男設定じゃ。服部良一の自伝映画として作る筈だった企画が取りやめになったのも当たり前だ。

本当は星もつけたくないが、2つもつけたのは山口淑子の「蘇州夜曲」、淡谷のり子の「夜のプラットホーム」など、本人歌唱のMVとしての価値、そして軽快な動きと歌の演出が素晴らしい、「セコハン娘」や「ブギウギ娘」を歌う笠置シヅ子の圧倒的な存在感故である。
余りにも観ていてフラストレーションが溜まってしまい、普段以上に乱雑、拙劣な文章になった事をここに自省したい。
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