アルルカンベア

ドライブ・マイ・カーのアルルカンベアのレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
4.0
✴️ビックリするほど⁉️
地味でアッサリ淡々とした画面が続く
真っ赤なSAAB900が特別な異空間

瀬戸内海の"青い海"と"赤のサーブ"
北海道の"白い雪"と"赤のサーブ"
さりげない対比がチョイと愉しい

家福の、みさきの、"ワーニャ伯父さん"の
ストーリーが絡みあいながら進行し
3時間が濃密で没入感が高い時間となった

ココロの内側をこんなアプローチで
深掘りしながら見つめる作業が心地よい

✴️村上春樹の原作をチョイスする勇気
ハルキスト達の大向こうを張り
アッと言わせるww
脚本.脚色のレベルがめちゃくちゃ高い

✴️チェーホフの"ワーニャおじさん"と
家福(西島)、みさきが重なりながら、
行ったり、来たり…

背負っているものがありながら
生きている…という共通点

希望を絶たれた状態で
生きていく境遇にあるという点で
家福とみさき、ワーニャ伯父さんとソーニャ
の二人の関係は呼応しあっている。

ソーニャの紡ぎ出す
セリフがココロに刺さるw
↓ ↓ ↓
ワーニャ伯父さん、生きていきましょう。長い長い日々を、長い夜を生き抜きましょう。 運命が送ってよこす試練にじっと耐えるの。安らぎはないかもしれないけれど、ほかの人のために、今も、年を取ってからも働きましょう。 そしてあたしたちの最期がきたら、おとなしく死んでゆきましょう。 そしてあの世で申し上げるの、あたしたちは苦しみましたって、涙を流しましたって、つらかったって。 すると神様はあたしたちのことを憐れんでくださるわ、そして、ワーニャ伯父さん、伯父さんとあたしは、明るい、すばらしい、夢のような生活を目にするのよ。
(『ワーニャ伯父さん』浦雅春訳 光文社古典新訳文庫より引用)


✴️配偶者の闇(病み?)に気付きながらも
問い詰めることで現状を壊したくない欲求

家福は“演技をしない演技”で妻を失い
その傷からの逃避をやめ
しっかり傷ついて、自分自身を再認識

人生俯瞰モードから今を生きるモードになり
過去や未来よりも今を選択したのです。


✴️徹底的にテキスト棒読みを重ねる事で
フラットで無味無臭の"テキスト"を
あえてカラダに染み込ませて
自身のヘタな演技感?を捨て去り
カラダの中に宿る"何か"を弾き出す

✴️多言語劇
中国語、韓国語、韓国手話、英語、日本語を1つの劇中に織り交ぜながら進行
言語の壁を越えて演じるコンセプト