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ドライブ・マイ・カーのtokoのレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
3.8
俳優であり演出家の家福。作家である妻との生活。

自分とは無縁な世界のせいか、日本映画なのに違う空気感を感じました。
心理描写を淡々と描くフランス映画みたいな(と言うほどフランス映画を沢山観てる訳では無いんですけど)

妻の自分への愛に疑問を持った時、自分の今の生活の変化を恐れ何も無かったかの様に振る舞った家福は自己中心的だと感じたし、そんな中での突然の妻の死は自分の葛藤を置き去りにされた答えが分からないままゲームオーバーになった喪失感…やはり、そこには妻への愛より裏切られた妻への怒りと未練しか見えてこなかった。

家福も妻を大切にしてる自分に満足し、自分が幸せなら妻も幸せだと思っている世の旦那さん達の1人だったのかも…

彼はテープに残る妻の声に執着する。
それは妻が彼の舞台の相手役の台詞を読んだ物…自分への愛の為と信じてたはずが、今は妻の裏切りを忘れない為に繰り返し流してる様にしか感じない。
そうやって彼は自分を肯定して生きていたのだろう。

そんな中の、演出家としての仕事で出会う専属ドライバーのみさき。
家福は愛車を他人に運転される事を嫌う。
そこにも家福の執着心と自己愛の強さを感じる。

みさきは、淡々と車を運転する。
乗った人は皆心地良さを感じるという。
乗る人、乗る車が快適になる様にとそれだけを思い運転するみさき…それは彼女が人を(車を)理解出来るから。
辛い思い出の中で、唯一の自分に出来る事だから。

みさきによって、自分を見つめ直す家福。
言葉少ないみさきに、少しずつ言えなかった自分の未練と苦しさを一方的に話す家福。
自分より妻を理解してる高槻に嫉妬する家福。
その一方的な嫉妬を吐き出した時、思い込みと真実を理解しようとしない家福が変わり始める。

少しずつ本当の妻の姿に向き合い、理解しようとする家福。
長い長い喪失感のドライブも、やっとトンネルを抜けたのかな。

執着心を捨てた家福。
みさきも自分を歩き出したんだね。
赤いサーブと供に…

ちょっと謎を残したまま終わる…やっぱり、終わり方もフランス映画みたいじゃない?(あくまでも私的感想です)
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