健一

皮膚を売った男の健一のレビュー・感想・評価

皮膚を売った男(2020年製作の映画)
3.5
今年受賞した「アナザーラウンド」や「少年の君」と共に 第93回アカデミー国際長編映画賞にノミネートされた作品。

恐らく私自身初めて!
チェニジアの映画を鑑賞。

このタイトルであのオープニング!
一瞬 ホラー映画? と惑わされた。

恋人に会うため 自身が『アート作品』になった男の数奇な運命・・・

ストーリー自体は正直 大したことないのだが、映像表現が素晴らしい。
まるで迷宮に迷い込んだかのような奇妙なアートの世界。
数百万ドルのお金が飛び交い『芸術』という魔力に人々は翻弄されている。
そしてその思考は頂点に。
シリア難民の貧しい成年の背中にタトゥーとして『作品』を彫り、成年自体を『アート作品』にしてしまう。
んん? やっぱりホラー映画なのか?
成年は『アート作品』になる代償の代わりに外国に行ける『自由』と高級ホテルに宿泊できる『上流生活』。
そしてなにより離ればなれになってしまった恋人を取り戻しに会いに行ける という『再愛』を手に入れる。
しかし、背中に背負った十字架は想像以上に重かった・・・

シリア難民、アートの世界、格差社会など チクリと風刺を効かせているのだが、やはりストーリー自体にパンチが無いのは ちょっと残念。
それを補(おぎな)うかのように鏡を巧みに使ったカメラワーク、あえて太陽光を反射させる眩しき映像、異世界を感じさせるような美術館の館内。
映像を大スクリーンで観ているだけで本作を映画館で観て良かったと芯から感じさせてくれる。いや、酔わせてくれる。
あの傑作「存在のない子供たち」を撮った撮影監督さんらしいので、なるほど。納得の素晴らしさ。

モニカ・ベルッチの怪しい妖艶、主人公の恋人役を演じた女優さんの無垢な美しさ。
女優陣のキャスティングも上手い。
主人公を演じたヤヤ・マヘイニも恋に 家族の生活に 自分の置かれた立場に戸惑いながらも人生を刻む男を繊細に演じていて素晴らしかった。
だがこの人。個人的な意見で申し訳ないが、顔が私の義理の兄に超ソックリで、そればかり気になってしまい あまり集中出来なかった。ごめん🙇。

『芸術の秋』に相応しい。
今、劇場で観るには最適な作品ではないでしょうか。
是非、お出かけください😃。


2021年 11月18日
Bunkamura ル・シネマ screen 2
💺126席
客入り 40人前後。

ロビーには長蛇の列!!!!
と思ったら 隣のscreen 1 で上映している
「パリ・テキサス」の列でした。😅
さすが名作。リバイバル上映だというのに凄い人気!
健一

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