"記憶が失われる"という病のパンデミックを背景に、市井の人の日常を描く。
先日は「こぼれる記憶の海で」を観て、同じテーマなのに作る人によってこんなにも違うという、当たり前の事をまざまざと見せつけられた。
こぼれる…の方は若い夫婦が何とか記憶を留めようと抗う姿をエモーショナルに描き、静かな中にもよろこび悲しみがそこかしこにみられたが、こちらのリンゴの方は淡々。淡々淡々。
悲壮感がない。コミカルにも見えてくるほど。ねらってるな、これは。
気が付いたら何もかも自分に関する事忘れてしまいました。ついてはどうしましょう。といった感じだ。
忘れた当人の行動や佇まいは優雅にすら見える。まあ、これは俳優の雰囲気の力でもあるんだが、少し悲しげな顔をしながらも嘆きがないので、まあ色々と忘れちゃうこともあるね位の軽みとおかしさが漂う、不思議な作品。
でも侮れないよ。人を人として成り立たせているのは記憶か？と。記憶が失くなったら？鑑賞中ごちゃごちゃと頭に考えが浮かんでは消える。
これぞ映画をわざわざ観る目的のひとつだよね。心と頭を震わせたい。
