髙橋ヨシキ氏の初監督作品であり、規模が小さめということもあってなのか全体的にチープさを感じた。あまりにも設定やストーリー、照明が安っぽかったが、良い風に捉えれば監督の主張をカリカチュアした作品ともとれる。
その主張とは「一方的に正しさを決めつけ、それから外れた人を監視し排除する事は危険である」ということである。まさに現代の日本のムラ社会を批判しているが、作品自体は現実社会に即して批判しているというよりは、主張の大枠を誇張しているような内容なので言いたい事は明確になっている。これをリアルな世界観でやられると作品内での説得力が全く無くなると思うので、チープで大味な世界観はある意味正解だと思う。
また終盤の暴力はなかなか見応えがあったのも良かった。(ただスローモーション演出が多いのは気になった)
とはいえ作品に必要であるはずの変化がほとんど描かれていないのは大分問題だと思う。
深間の治療前後の変化や富士見町の変化は必ず描くべきだが本作は何がどう変化しているのか全く分からなかった。深間は戻ってきてからも気性は荒く見えたし、富士見町は最初からディストピアなので監視社会の行き着く先の恐怖が全く感じられなかった。内容としてはもろに「時計仕掛けのオレンジ」と被っているのにそれほどの狂気が感じられなかったのは非常に残念だった。
