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私たちの青春、台湾のHMのレビュー・感想・評価

私たちの青春、台湾(2017年製作の映画)
4.5
台湾の大学生・陳為廷と中国からの留学生・蔡博芸を中心に描く、2014年の台湾のひまわり運動をめぐるドキュメンタリー。2017年公開。監督はフー・ユー。

前半は監督が特別な存在と感じた二人が楕円の焦点になりながら、2014年のひまわり運動成功へと進んでいく。

後半はその後の二人の挫折と葛藤で、前半部分よりもさらに若者の変化・変節・二面性・孤独・成長を掘り下げていく。中華圏の相互理解と民主化の難しさからも目を背けていない。

最後は約5年間見守って撮影してきた監督がいかにこのドキュメンタリーを完結させるかという作り手としての葛藤が直接二人に対してぶつけられ、さらに二人への向き合い方の変化が語られる。
二人に理想像、英雄像を見出すのではなく、個人として民主主義にどう向き合うかというテーマに総括していくことで、撮り溜めてきてた映像の断片を一本ドキュメンタリー作品として完成させていく過程を見せてくれる。
このことで被写体の二人を焦点に楕円を描いていたストーリーは、ラストでその軌道を外れる。
そして見ている観客自身が民主主義に向き合う必要性を突きつけられ、責任と希望を感じさせる。

作中では香港の社会活動家、ジョシュア・ウォン、アグネス・チョウとの2013年、2014年ごろの交流も映し出されている。さらに私自身は本作を大阪市廃止を問う2020年11月1日の住民投票翌日にこの映画をみた。
2020年代の始まりに生きる自分自身が、民主主義に対してこれから何が出るのか、何をしていくのかを考える大きな後押しになる作品だった。
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