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ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバーのHMのレビュー・感想・評価

4.1
物語の一番大きなテーマは「喪失」。
心の穴にいかに向き合うかについての人間ドラマで、シュリの最後のシーンが心に残り、いい余韻になった。

もうひとつ、「他者」に対する敬意をいかに育むかの描き方も重要なポイントだった。
前作ではCIAのロスが治療のために連れて行かれたワカンダで、自分よりも優れた文明、異なる文化があることを知る。ロスが目覚めた時にそばにいたのはシュリで、彼女がワカンダのテクノロジーを最初に伝える存在だった。
今作ではそのシュリがタロカンに連れて行かれることで、海底に潜み続けた帝国の文明の力を知り、異文化に触れ、対話の機会をもつ。

オコエが「彼女は外に出た方がいい」と言ってシュリがアメリカの作戦に参加したことは、結果的にタロカンとの出会いに繋がる。それはシュリにとって自分達よりも強大な力を持つ存在と初めて出会った経験でもあるし、王とはいかにあるべきかも学ぶ機会となる。

ロスはオコエなどのワカンダ人に「colonizer」と呼ばれるが、彼は他者と出会ったとき、敬意を抱くことができ、助けてもらった恩義から彼らとともに戦う。
ではシュリはどうするのか?

彼女が今作で失うものの大きさは果てしない。それでも他者の尊重、そして王家としての現実的な判断を見失わなかったからこそ、感情を表に出すことができた最後のシーンが心に染みたのだと思う。
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