みや

アジアの天使のみやのレビュー・感想・評価

アジアの天使(2021年製作の映画)
4.0
比喩ではない天使が、キチンと画面に登場するところが面白い。しかも「アジアの」とわざわざ断っている意味って、こういうことなんだというのも納得できる。

人は誰しも、自分の力の及ばない出来事などに対して、どの宗教を信仰してるかしてないかに関わらず「神の意思」といった納得のさせ方で飲み込もうとする心の働きがあるように思うが、それを「逆手」ではなく、ななめ上からひっくり返すようなウィットのある作品。

冒頭から、日韓の関係悪化という記事や、「日韓共に、6割を超える国民が、相手国を嫌いと答えている」といった話が出てきて、「ああ、そっちに話を持っていくのか…」と、ホントはちょっとため息だった。
「日韓で、互いにいがみ合っていると言われているが、直接触れ合えばわかりあえるよ…ってスジだったら、単純過ぎてつまらないなぁ」と思っていたのだ。
だが、結論からいうと杞憂だった。
もちろんそういうスジの形もちゃんと取りながらも、描いているのは、人と人とのコミュニケーションと言葉の問題だったり、口に出している言葉と本心の関係だったり、理想と現実のやるせなさだったり、自分自身の尊厳の保ち方だったり、家族のしょうもなさと救いの話だったりと、いろんなところにキチンと引っかかってくる豊かさがあった。

最初はもったりするが、主人公とヒロインが互いのコミュニケーションの方法を生み出してから、俄然面白くなる。

もう一つ、朝焼けの映像はこれまで観た映画でも屈指の美しさだった。こういう中だったら、思わず本当のことをしゃべっちゃうよなぁと思った。

あと、いい加減な人物なのに憎めないって役をやらせるのに、オダギリジョー以上の適役はいないことを再確認した。

まだ未視聴の方は、力を抜いて観てください。
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