ボブおじさん

あのこは貴族のボブおじさんのレビュー・感想・評価

あのこは貴族(2021年製作の映画)
4.2
女性作家の原作を女性監督が20代の女性達の視点で描いているが、年齢・性別・住む場所が違っても、案外共感できる話だった。

この映画は日本社会に蔓延る階層の違いによる断層とその中で振り回される2人の女性の成長を描いている。階層社会といえばイギリスやインドを思い浮かべるが、華子・美紀・幸一郎の生活や実家を見せながら、日本の社会にも階層は確実に存在することを観客に示す。他国と違い表立った階層間の対立を生まないのは、それぞれが暗黙の中でそれぞれの階層の中で平穏に暮らしているからだろう。

同じ時代に生まれて同じ学校に通っていても、生まれた家柄や経済力、出身地によって格差は生じる。だが格差は本人の努力など後天的なもので、ある程度は埋めることもできる。一方、努力などでは埋められないものもある。

この映画では、それを階層と表現していた。確かに階層が違えば、食べる物・着る物だけでなく、付き合う人から場の空気など住む世界が違い、近くに居ても交わることはない。自分自身も金持ちの友人は何人かいるが、階層の違う友人は思い浮かばない。

出会いを求めた華子に汚い居酒屋であっさり振られた人の良さそうな若者は可哀想だが、華子を責める気にはならない。どんなにいい奴でも2人はうまくいかないと見る側にもわかるからだ。

日本人の多くは美紀の前後の階層に属している為、華子達の階層を貴族に例える表現に違和感は無い。幸一郎は、更にその上の特権階級に属し、表裏で社会を動かしていくことになるのだろう。

ただ、階層が違ってもそれぞれの世界に幸せに見える人もいれば、そう見えない人もいる。ホテルの会食でも汚い居酒屋でもそれは同じだ。同時に同じ人でも幸せそうな時とそうでない時がある。

どんな階層に居ても、最高と思う日と泣きたくなる日がある。どんな階層に居ても、その日に何があったか話せる人が居れば人生捨てたもんじゃないと友人は言う。

交わるはずのなかった2人が同じ男を介して出会い、階層を越えて繋がっていく。失うものもあった華子だが、話を聞いてくれる人もいる。もう親の人生をトレースしたりしない、階層から離れ彼女は初めて自分の足で新しい一歩を踏み出していく。


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気がつけば、これが200本目のレビューでした。Filmarksを始めて100日で200本だから1日2本のペース。暇か(^^)