グラビティボルト

夜よ、こんにちはのグラビティボルトのレビュー・感想・評価

夜よ、こんにちは(2003年製作の映画)
3.9
マルコ・ベロッキオ初鑑賞。
イタリアの極左「赤い旅団」に所属する女性が、1973年当時のモロ首相を監禁し、闘争を試みる革命映画。
首相と共に過ごすうちに段々内面がブレていく静かな映画なんだけど、監禁部屋の準備をする冒頭から最後までスリルが切れない傑作。

自分の預り知らない所に思想が伝播していく狂躁と怖さを表現した、役所のエレベーターの場面が凄い。
エレベーターに乗ろうとした人が中に入った途端逃げ出して、階段が人で溢れていく。
赤いインクを血に見立てて、逃げ出す人を撮る事で最早ホラー的にもなる。

監禁部屋を借りる冒頭も凄い。
暗闇のパン、ブラインドを開けると空間が広がる驚き、主人公達を会話させず、動作と表情でただならぬ隠密のムードを漂わせて、
落ちてくるシーツ、向かいの家からの視線でサスペンスを作っていく。
そしてあのTV中継への反応で人物を描写する。

クライマックスの切れ味も凄い。
料理に薬を入れる展開から次元を2つに別けていて、こうあって欲しかった、生きていて欲しい人が生きているIFと、そうはならなかった、死ぬ運命にある人が目隠しされて、死んでいく現実、史実をクロスするラストショット。見事。