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哀愁しんでれらのtkykのネタバレレビュー・内容・結末

哀愁しんでれら(2021年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

「swallow」と同じ雰囲気、メッセージを感じた。「〜らしくあること」の苦しさからの脱却をswallowが描いていた一方でこの映画は「〜らしくしなければならない」ことに囚われた結果、最も間違った姿に成り果てる事の恐怖みたいなものを感じた。
その点でこの2つの映画を見たのはとても良かった。
ツッコミどころとしては主人公が児相で働いていたという背景が全く生かされてない事、点滴を射つ意味、最後の事件の動機が不明瞭なところ、光の言動の動機がよくわからないことの4点があると思った。
主人公自身が母親から見放されたという経験から児相で働くことになったというのは納得できるが児相でそこそこの年数働いているのであれば、自分と同じような経験をする子供が現れる原因は単に「親がしっかりしてないから」というものではなく、親自身が抱える悩みも原因である事は、ネグレクトされた主人公なら、より実感するはずだが、単に「親が悪い」を事あるごとに言うようでは、児相で何を経験してきたのかと思ってしまい、違和感を感じた。さらに自分自身が子供との関係に悩むようになる場面でも児相にいた経験を生かしたり、児相に相談しようと思う気がしてしまった。これらの違和感から主人公が児相で働いていたと言う設定は要らなかったと思う。また、ねほりんぱほりんで児相の特集を見たからではあるが、児相の描き方ももう少し親に寄り添っているような描写が欲しかった気がする。
主人公が点滴を打つ場面についてはこれが最後に悲劇に加担する役割を持つのかと思っていたが、そんな事はなく、いまいちこれが象徴する意味が掴めなかった。
最後の惨劇の場面は、いろんな伏線を回収しての結末としては良かったが、動機がイマイチはっきりしていない気がした。確かに自分達の幸せのために他人を不幸にしようとした、または我が子の幸せのために他人を排除しようとしたというのが動機だと思うが、そのような狂気じみた思考になるほどの経験をしているようには見えなかった。
光の描写も、演技自体はとても良かったが、なぜそのような行動をするのかいまいち分からず、少しサイコな子供に感じた。幼児後退してるからという理由が述べられてはいたが、その割にはかなり非情な行動をしているように感じたし、児相で働いていた主人公が幼児後退してると安易に結論づけて良いの?と思った。光もまさに小春と同じ境遇にある子供であるにも関わらず、さらに小春が児相で働いていた経験があるにも関わらず、全く光と向き合えておらず、つくづく児相で働いていた設定を生かしていなかったし、光と生みの親の関係ももっと描いて欲しかった。それが無いせいで光がわがままな悪者のように見えてしまった。
ツッコミどころはあったが自分が「正しいと思っている」ことの危うさや、「〜らしさ」が抱える不条理を描いている点ではとても良かったし、土屋太鳳が普段の純粋さからのギャップで凄く不穏な感じが出ていた。
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