ずどこんちょ

カーズ2のずどこんちょのレビュー・感想・評価

カーズ2(2011年製作の映画)
3.3
「カーズ」の続編、主人公はマックィーンではなく、親友のメーターです。

本作ではマックィーンがワールドグランプリに出場してレースに本領発揮している最中、メーターがその裏で闇の組織の燃料を巡る陰謀と諜報活動に巻き込まれて行くというストーリーです。
前作とは違って、今回はちょっと大人向けなストーリー。石油に代わる代替燃料の登場とそれに反対する組織が石油を独占して利権を得ようとする企みが展開されているのですが、そんなこと子供に分かるものですか。
新しく開発された代替燃料の弱点として、ある一定のレーザー光線を当てることでエンジンが爆発するという欠陥があるのですが、そのレーザーを忍ばせているのがレースを撮影しているテレビカメラ。
カメラを向けて爆破を誘発するという、その仕組み自体が理解されているか疑問です。
闇組織のボスの正体だって、なぜ彼が真犯人だと気付いたのか、その真相もとても細かくて、大人向けなサスペンス要素を感じます。ジェームズ・ボンドのようなスパイ活動が主軸になっているから仕方ありません。

もっとも多分、子供たちはマックィーンのカッコ良さに今回も痺れているのだと思います。
新キャラの一人のフランチェスコ・ベルヌーイはマックィーンを挑発する鼻持ちならないライバルなのですが、マックィーンは彼の挑発にレースで応えるのです。
陰謀が展開する中、そんなことも知らずに自分のレースに集中しているマックィーン。

しかしそんなマックィーンを悩ませるのが、親友メーターです。
錆だらけで自由奔放なメーターを初めてピットクルーとしてワールドグランプリに連れて行くマックィーンなのですが、メーターは世界各地でいつものように頓珍漢な言動を繰り返し、皆の笑い者となってしまいます。
恥も外聞もなく騒ぎ回るメーターにマックィーンの方が恥ずかしさを感じてしまうのです。そしてつい、メーターの無線でレースで大敗したマックィーンはメーターを迷惑がってしまいます。
マックィーンは親友に冷たい言葉を放ってしまったことを後悔し、悩みながらその後のレースに臨むのです。

メーターの錆だらけの姿をカッコ悪いと思い、的外れな言動を繰り返すことを恥ずかしいと思ってしまったマックィーン。洗練された都会で育った人気者だからこそ、田舎の片隅で世間を知らずに育ったメーターを恥ずかしく感じてしまったのでしょう。
しかしそれは、メーターの生き方や彼のアイデンティティを否定することに繋がります。
そんな後悔を募らせるマックィーンに、イタリアで出会ったルイジの叔父さんは助言します。
「親友だったら、どうして変われって言ったんだい?」
変わらなくていい、君はそのままでいい。出会った後、そのままの君と一緒にいることが楽しいと思えたのだから。
マックィーンはメーターに謝って仲直りをしたいと願います。

一方その頃、メーターはひょんなことから闇の組織とイギリスの諜報部員の攻防に巻き込まれていました。
諜報員フィンとそのサポート役であるホリーに、アメリカの諜報員が擬態した姿だと誤解されたメーターは、彼らのミッションを知らされます。そしてメーターの豊富な知識を買われて協力を求められるのです。
片田舎の何者でもなかった錆だらけのメーターに特別任務が与えられたり、擬態ロボが搭載されたり、ロケットエンジンが搭載されたり。
本作で遂にメーターにもスーパーヒーローの如く活躍できる場が与えられたのです。

ありのままの親友で良いというメッセージが良かったのか、それともやはりカスタムされて進化したメーターが良かったのか。
ちょっとテーマがぶれてしまった気もしますが、主人公になったメーターが世間と出会うことでこれまで気にもしなかった自分のアイデンティティに目を向けたことが本作で最大の成長なのだと思います。
ラジエータースプリングスにいた頃は、ただ自分のレッカー車としての仕事に邁進していれば良かったメーター。仕事以外の時間は、トラクターを馬鹿にして遊んだり、ふらふらとぶらつきながら独り言を言っていたりしただけです。
車に関する専門知識に長けていて、マックィーンの親友で、仲間のことを思っている。そんなメーターが世間と出会うことでただの無自覚な笑われ者から、変わり者な自分を認めることのできるメーターに成長したのだと思います。

本作ではワールドグランプリの開催地となる世界各国が舞台になります。
イタリア、フランス、イギリスなど。その中の一箇所が日本です。いかにも外国人から見た日本といった感じの和のテイストで脚色された日本が舞台になっていますが、漢字やカタカナが入り混じった東京でレースや諜報員と闇組織の激闘が繰り広げられるのはなんだか興奮します。
更にエンディングで流れるPerfumeの「ポリリズム」。確か当時も話題になっていましたが、世界公開版のエンディング曲に抜擢されているのです。
ラジエータースプリングスの田舎町から一気に世界へ飛び出して、様々な国でその土地の要素を交えながら展開するストーリー。個人的には日本の警視庁のパトカーを始め、各国の様々な警察車両を登場させたことが世界を舞台にしていることを感じられて良かったです。

メーターの得意なバック走行も、漏れなく活躍する場面がありました。マックィーンも追いつけないほど早いバック走行。素晴らしいです。