映画大好きそーやさん

マグノリアの映画大好きそーやさんのネタバレレビュー・内容・結末

マグノリア(1999年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

ロサンゼルスに住む人々の24時間を追った、群像劇超大作!
187分という途轍もない長尺にビビっていましたが、いざ鑑賞を開始すると何人(或いは、何組)かの視点を行き来しながら進行していくストーリーにのめり込み、最後まで寝落ちすることなく観切ってしまいました。
まず褒めたいのが、本作を制作するきっかけにもなったエイミー・マンの楽曲です。
本作は、全編に渡ってエイミー・マンの楽曲が使われており、とにかく耳心地のいい作品となっています。
特に、OPシークエンスで使われていた「One」は流れた瞬間から凄い音楽が奏でられ始めたぞと、全身の鳥肌が一斉に立ってしまうほど興奮しました。
こんな経験、『ラ・ラ・ランド』のOPシークエンスで「Another Day of Sun」を聴いた時以来だったと思います。
それからは出てくるキャラクター皆を好きになって、誰もが取り残されることなく幸せになってほしいと願わざるを得ませんでした。
それぞれ違った事情をもちながらも、同じ町に暮らしていることもあって、偶然に会い共鳴しながら、その偶然によって紡がれた1日を生きていきます。
両親に対して何か後ろめたい思いを抱えながらも、男性向けの商材で莫大な利益を上げている男がいます。
若いころテレビ番組のプロデューサーをしていたお爺さんは、末期癌で自宅療養を余儀なくされています。
その妻は最初こそ資産目的で結婚しましたが、徐々にお爺さんの人間性に惹かれ始め、自分のせいでお爺さんが病気で苦しんでいるように思っています。
そのお爺さんが元々プロデューサーをしていた人気クイズ番組に出演する子役の少年は、父親からの期待を一身に背負って、今日も収録現場へと向かいます。
娘からよく思われていないそのクイズ番組の司会者は、癌で余命幾ばくかとなっています。
その娘は薬物中毒で、近隣住民から苦情を受け、警官すら駆け付ける始末です。
その警官は自分は幸せだと語りながらも、どこか空虚に苛まれています。
そんな彼に悪行をしているところを見つかった、元天才少年で同性愛者の男もいます。
そして、やがて彼ら彼女らに訪れる蛙の雨、デウス・エクス・マキナの衝撃は、初鑑賞時度肝を抜かれました。
絶妙なつながりを見せていく、精緻で、それでいて作為性を感じさせない脚本に惚れ惚れさせられ、またロサンゼルスに等しく蛙の雨を降らせることによって、すべてを力づくで解決へともっていく気持ち良さに震えました。
末期癌の父親(上記で言うお爺さん)に対して、過去の因縁で恨みをもっていながらも、父親が療養する自宅を訪れ、最後の最後にはまだ死ぬなと叫ぶ姿には思わず涙腺が緩んでしまいました。
また、妻に己の不義理を告白しそのまま出ていかれ、人生に絶望した人気クイズ番組の司会者が、こめかみに銃口を付け引き金を引こうとした時に、蛙が降ってきて銃口がズレるという演出も良かったと思います。
死によって救済など与えず、生き続けることで罪を償わせる。素晴らしい神の采配だと感じました。
あと、口では軽口を叩きながらも、どこか空虚を抱えていた警官も、人気クイズ番組の司会者の娘と結ばれ、満たされた表情を浮かべていたのも心に来るものがありました。
他にも沢山良い点はあったのですが、このくらいにしておこうと思います。(皆さんが良かったと思った点も、コメント欄に書いて頂けると嬉しいです。お待ちしております!)
悪い点としては、冒頭の、炎による場面転換の安っぽさと、マンションから飛び降り自殺をしようとした少年が、本当はネットがあったために助かっていたが、誤って発砲された銃によって死んでしまったという事件で、ならばなぜそのマンションで飛び降り自殺をしようとしたのかということの2点が気になりました。
それ以外はキャラクターの描写も良く、3時間弱ありながら全く退屈しない内容だっただけに、勿体なさを感じてしまいました。
総じて、長尺をフルで活用した、総勢9人のメインキャラクターで織り成す群像劇の決定版的傑作でした!