…穏やかな陽の光、風はそよぎ、鳥が鳴き、虫の羽音が響く…遠くでトラクターが働く…そう、ここはとある農場…ブヒブヒと鳴き声が響く納屋の中…生まれたばかりの子豚が、母豚"グンダ"の乳に我先とむしゃぶりつく…
…何処からか連れて来られた鶏達…ゆっくり籠から出てきた一羽の片脚の鶏は、"むんず"と地面を掴むと、自由への逃避を始める…
…牛達は、群がる虫達をお互いの尻尾で追い払う…
ありふれた農場の風景と生き物の営み…穏やかな豚達の日常はある日突然終わりを告げる…そう彼らは家畜なのだ…
鑑賞するか随分迷いました…なんせ、モノクロ・ナレーション無し・音楽無し…ただひたすら"ブヒブヒ"を90分ですから…果たして耐えられるのであろうか?という不安しかなく、寝ちゃいそうだけど、どうしようか数分悩んだ挙句、意を決して鑑賞、結果は…"なんだ面白いぞ"です。
モノクロの美しさが映え、絶妙なカメラアングルとカメラワークで映し出されるのは、家畜ではありますが、そこには厳しい生存競争があり、生きようとする家畜の意思のようなモノを感じてしまいます。
正に、"無限の宇宙がすぐそこにある"のです…
果たして、動物達に何処まで感情というモノがあるのかわかりませんが、今作での豚・鶏・牛には確実に感情があるように思えてなりません。
"ブヒブヒ…ピギャー"と響き渡る豚の鳴き声は劇場だからこその迫力ですし、鶏の脚なんてもはや恐竜だし、牛に群がる虫達の迫力もゾゾゾってきてしまう…TVでいいじゃんと思う方もいるかもしれませんが、これは劇場で観るべき作品です…