賽の河原

なぜ君は総理大臣になれないのかの賽の河原のレビュー・感想・評価

4.0
『新聞記者』はリベラルがホルホルするためだけに作られた映画で、リベラルが敗北するのもやむを得ないなと思いましたけど、『なぜ君は総理大臣になれないのか』実に真っ当にリベラルの視点から撮られた素晴らしいドキュメンタリーでしたね。大島新監督の見事な仕事ですね。
小川淳也という四国の代議士に密着したドキュメンタリーなんですけども、まず驚くのはその密着の長さですよね。初出馬した2003年から映像を撮影してる。これだけ長期間にわたって政治家を撮ったドキュメンタリーってだけでかなり貴重ですよ。
小川淳也さん自体は今でこそ立憲民主党の議員としてやってるわけですけども、そもそも郵政選挙だとか、小泉政権の終焉後、自民党のオルタナティブとして民主党が機能し得た自体から、民主党政権時代。そして民進党時代と希望の党に合流するのしないのって、そういう激動の時期を全て撮っているのが本当にすごい。
で、そこで撮られている映像が何を見せてくれるかっていうとね。もうね。なかなか辛いw
ここから書く内容の大前提ですけど、どっちかといえば「政治」というものは我々大衆の生活に寄り添ってほしいじゃないですか。少なくとも、俺たちの手でグリップ感のある政治が好ましいに決まってる。と、俺は思うんだけど。
小川淳也さん自体に軸足を置いて撮影してるんで、そらもうポジティブに切り取られてるっていうのはあるにせよね、そういう意味では本当に国民に寄り添ってる「いい人」なんですよ。なんなら議員になっても地元の香川では普通に5万円台みたいなアパートに住んでるみたいなw 当然2世議員でもなんでもないし、たまたま美容室やってる家の子が東京の大学に行って総務省の官僚になっちゃったみたいな人なんですよね。
総務省で仕事しているなかで「役人は省益のためにしか動かんわ、政治家がしっかりコントロールせなあかん」ってことで出馬して代議士になるんですわね。
ところが、この人の香川の同じ選挙区にはいま大臣やってますけど、平井卓也っていう政治家がいるんですけど、3世議員なんですよね。んで一族が西日本放送だの四国新聞だのとの関わりが強いw ただでも田舎は自民党が強いのに、こんなとこで三バン持たずによくやってるなとは思いますけど。
ともかく選挙区では毎回厳しい戦いなわけですよ。だから毎回比例で当選する。比例だから党内で発言力が弱い。2003年の最初のときには希望に満ちた状態で政治家になったのに、だんだん政界の現実にやられていくっていうドキュメントですよね。
タイトルは挑発的ですけど、こういうそれなりに誠実そうな政治家が国会で影響力を持てないのはなんのせいなのか。小川淳也自身も映画内で言ってますけど、国会議員を国民がバカにしてる、そういうレベルでは当然民主主義なんて機能しようもないですわな。もっと言うと、社会は異様なほど複雑なので、複雑さを把握した上で意思決定を行うコストなんてパンピーには払えるわけがないんですよね。
私は某代議士事務所で勤務してた時代があって、それ以降、投票という行為にほぼ関心がないんですけど、そろそろ人類のいまの状態に応じた、新しい民意が反映される仕組みとか概念を現代のルソー的な人が現れて考えて欲しいっすね
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