優しいアロエ

ライムライトの優しいアロエのレビュー・感想・評価

ライムライト(1952年製作の映画)
4.0
〈喜劇王が生身で送る人間賛歌〉

 チャールズ・チャップリンが仮面を脱ぎ捨て、マイムを抑制し、コメディを慎んだ。人柄の滲んだチャップリンの素顔に泣き、思いのほか饒舌に語られる人生観に泣く。本作は「生死」をプロットに組み込むためなら強引な展開も辞さない少々臭い人生賛歌である。

 人間は自分のことになると悲観的になってしまうが、他人のことなら希望を見出せる。そんなボクらはお互い助けあうことで初めて生きていけるのだろう。その意味ではどんな人間も他人に活力を与える可能性をもつ。本作はどこか『道』に似た教訓を感じさせる。

 “あのチャップリンが素顔を晒している”という事実が、物語に迫真性と痛々しさのようなものを確定的に生みだしている。また、クライマックスには落ち目のバスター・キートンが長年のパートナー役として登場し、また本作を以てチャップリンはハリウッドを追放される。こうした数々のメタ要素が、再起を鼓舞する本作の物語をよくも悪くも一層感動的なものにしている。

 しかし重要な瞬間が唐突に済まされていったのは残念だ。たとえばバレリーナが立ち上がるところ、逆に舞台裏で再び脚が震えるところ、そしてチャップリンが最期を迎えるところなど、重大な局面が打ちつけに訪れる。その割にはそれらをドラマチックに見せようとするきらいがあり、いかにも感動を誘うようなアップショットが不自然に挿入される。このあたりはやや堪えた。

 とはいえ、ラストはいい。『夏の遊び』を思い出した。バレリーナが再び飛翔する姿に私は弱いのかもしれない。助監督にロバート・アルドリッチ。
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