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アシスタントのtkykのレビュー・感想・評価

アシスタント(2019年製作の映画)
3.8
全く派手な事が起きない淡々とした1日を見せられているはずが、巨大な差別的構造を滲ませており、それがごく身近なものであることを痛感する辺りにドキュメンタリータッチの本作の見事さを感じた。
冒頭から朝早くに出勤する主人公ジェーンを映し、そこから延々と業務をこなす姿が示される。傍から見ればなんて事ない雑務の数々であるが、その端々にジェーンのことを微塵も思いやってない言動が見られる。その点に男性優位で若い女性は強制的に底辺に追いやられている差別が垣間見れる。それが極に至るのが会長の疑惑を打ち明けようとする場面である。自分の将来を勝手に天秤にかけられ、目の前にある性暴力を無いことにさせられるのは非常にグロテスクである。その後の女性社員の「彼女は彼を上手く利用する」という言葉は悪い意味で非常に印象的だった。恐らくはジェーンと同じような体験をしたであろう彼女が既に諦めて受け入れてしまったことを示している台詞だった。
普通の一日の中で大量の差別に晒される事が静かに描かれるため、慣れてしまうと素通りしてしまう危うさを感じた。そしてつい最近までそれが現実であったことを考えると如何に映画業界が歪な構造であったかを痛感した。本作は映画業界に関する話であるが他の業界でもこういった構造が未だに息を潜めて存在していると思うと平等に関して意識的でなければならないと思った。
本作でのジュリア・ガーナーは圧巻の演技であったが特に泣きそうになるのを堪える顔が非常に印象的であった。泣くのをこらえないと業界で生きていけないという抑圧感が彼女の顔1つで表現されていた。
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