えびちゃん

さよなら、私のロンリーのえびちゃんのレビュー・感想・評価

さよなら、私のロンリー(2020年製作の映画)
4.5
ミランダ・ジュライの新作が公開されたぞ!!!!詐欺師の両親とその搾取子のお話だぞ!!!!!
過去2作がそうだったように、やはりセラピーのように自分と向き合ってじわじわ癒されていくような作品だった。彼女自身も癒されながら作っていたように思えてしまう。面白い/面白くないという次元を超えて"刺さる"映画である。
作中でのあらゆる身体表現はミランダ・ジュライの映画を観ている!と強く実感できる。音楽やその使い方、テンポの良さははっきりとミランダの映画だった。響かない人にとってはかけらも響かない映画だろうけどミランダの個性がしっかりとでている。そしてトイレのシーンではインスタレーションにぶち込まれたようだった。映画という宇宙空間に一緒に漂う。ちょうど東京で大きめの地震があったのも親和性があってなんかよかった。ここのシーンだけでも映画館で観たかったな。
親は子を選べないし、子も親を選べないし、親は子を管理したがるし、子も親に理想を押し付けがちだし…。親なんてそんなもんだし通過儀礼よな、と切り捨ててしまうことができない人もいると思うし、そういう人には心を痛める作品かもしれない。
臨終の間際に生活音を聴いていたい、というのは分かりすぎてしまってちょっとつらい。我が家だったらどんな音だろうと考えると珍しくホームシックに。ずっと実家に帰っていない寂しさもセンチメンタルの加速を手伝ったのかも。耳から通り抜けていった愛おしい物音たちを思い出し浸ってしまった。
孤独・疎外感を極めた物語は後半にかけてたたみかけるように加速していく。覚醒してからのラストスパートは伏線を全部拾っていくが決して爽快というわけではない。のにしっとりとした温かい気持ちで満たされる。天才。天才よ、ミランダ・ジュライ。
ダッセェ邦題付けられたうえに配信スルーという扱いだけど2021年ベスト候補だな〜。やっぱりだいすきだった。ミランダもマイク・ミルズももっと映画撮ってくれ〜。
えびちゃん

えびちゃん